全4861文字

 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載25回目に登場するのは、法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授。ライフキャリア論を専門とし、「変芸型キャリア=プロティアンキャリア」を提唱する田中教授は、わが子の子育てでも「プロティアン子育て」を実践する。親の価値観を押し付けず、常に子ども主動で幅広い分野に挑戦させる田中教授の子育てとは。話を聞いた。今回はその後編。

法政大学教授 田中研之輔(たなか・けんのすけ)氏
1976年生まれ。法政大学教授、社会学博士。一橋大学社会学研究科博士課程修了。メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員を務めた後、2008年に帰国。ライフキャリア論を専門とし、教育・研究活動を行うと同時に、多分野のプロフェッショナルと連携してグローバル人材育成活動にも取り組む。一橋大学、慶應義塾大学、早稲田大学ほか9大学で兼任講師。社外取締役・社外顧問を13社歴任。『走らないトヨタ ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(ちくまプリマー新書)など著書20冊。『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(ちくまプリマー新書)、『辞める研修 辞めない研修』(ハーベスト社)が3月に刊行予定。大学教員の妻、13歳の長女、10歳の次女と4人暮らし。(取材日/2018年12月25日、撮影/鈴木愛子)
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

インタビューの前編「わが子を『変幻自在に生まれ変われる』大人に育てるには」では、キャリア論のプロフェッショナルでもある田中先生が、ご自身が提唱する「プロティアン・キャリア」を軸に、子どもにも「プロティアン子育て」を実践されている様子をうかがいました。田中先生の方針は、奥さまとも一致しているのでしょうか。

田中氏(以下、田中):一致はしていないように思います(笑)。妻は妻で気になる部分が違うので、すべて同じではありません。でも違うのが当然だし、それを無理に合わせる必要もないと思っています。

 仮に、妻が試合の結果に対して厳しめに娘に言っていたとしても、私から「そこまで言うなよ」と妻を否定することはしません。「そこまで結果にこだわらなくていいと思うけどね」とだけやんわりと伝えます。それも子どもの前で言うようにして、あえて“意見の違い”をちゃんと見せます。

 親は子どもにとっては「社会の入り口」です。だから、人の数だけ視点の違いがあると伝えたほうがいい。経験が違えば、視点が違うのは当たり前だし、これからのダイバーシティ社会には重要な前提となります。

 「両親で意見が違うと、子どもが混乱するのでは」という考え方もあるかもしれませんが、その混乱も含めて成長につなげてもらいたいなと思っているんです。

ほかに、子育てで積極的に心がけていることはありますか。

田中:新ジャンルの開拓は、できるだけ子どもの提案を尊重したいと思っています。ただそれでも、子どもが自力で知り得る世界には限界がありますよね。だから、視野を広げていくサポートは親の重要な社会的役割です。私はできるだけ“一流”を見せる機会を与えたいと思っています。