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 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載24回目に登場するのは、東南アジアとインドでスタートアップ企業への投資・育成するベンチャーキャピタル事業を展開するリブライト パートナーズの蛯原健代表。家族でシンガポールに住み、子どもたちも現地の学校へ通わせる蛯原氏。出張が多く、1年のうちおよそ半分は家を不在にする中で、どのように子どもと接し、父親の役割を果たしているのか。そして異国の地で子どもを育てるメリット・デメリットは何か、話を聞いた。今回はその前編。

 なお蛯原氏は2019年2月18日〜21日に福岡で開催される「ICCサミットFUKUOKA 2019」のプログラム「子育て経営学— 私たちは子供をどう育てていくのか?」に登壇。本連載の初回に登場した早稲田大学大学院の入山章栄准教授らとともに、子育てと経営の共通点などについて語り合う。

リブライト パートナーズ 代表取締役 蛯原 健(えびはら・たけし)氏
1994年、横浜国立大学経済学部卒業。日本合同ファイナンス(現JAFCO)に入社し、ベンチャーキャピタル及びスタートアップ経営に携わる。2008年にリブライト パートナーズを設立し、スタートアップ投資・育成事業を行う。2010年よりシンガポールに事業拠点を移し、東南アジア新興国での投資事業を本格化。2014年からインド・バンガロールにも常設チームを置く。現在はシンガポールを拠点に、アジア各国のテクノロジー・スタートアップへ投資・育成するベンチャーキャピタルファンドを運用する。日本証券アナリスト協会検定会員CMA。取材時、47歳。シンガポール在住。元公務員で専業主婦の妻、10歳の長女、5歳の長男の4人暮らし。(取材日/2018年12月26日、撮影/洞澤佐智子)
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

蛯原さんは東南アジアとインドでスタートアップ企業へ投資・育成するベンチャーキャピタル事業を展開しています。普段は家族ともシンガポールを生活の拠点にしているそうですが、今回は年末年始の帰国に合わせて、都内で取材の時間をいただきました。ご家族も一緒に帰国されたのでしょうか。

蛯原氏(以下、蛯原):妻と2人の子どもたちは一足早く帰国して、僕の母と合流して、京都旅行を3日ほど満喫してから、実家のある北海道に帰省したところです。僕も東京で仕事を終えた後に合流します。

 妻は京都が好きなので、なるべく帰国に合わせて旅の時間をつくっているんです。日頃は子育てをかなり頑張ってくれているので、リフレッシュしてもらいたいな、と。母も呼んで、親孝行とセットで“奥さま孝行”のつもりです(笑)。年明けには北海道との気温差が50度近いシンガポールに戻ります。

シンガポールに移住されたのはいつからですか。

蛯原:事業の拠点を移した8年前です。当時は妻も公務員として働いていたので、僕だけが5年ほど行ったり来たりの半単身赴任をしていました。妻が、退職を機に子どもたちと一緒にやって来て、2年前から家族そろったシンガポール生活をスタートさせました。

 といっても、僕はしょっちゅうアジア各国の投資先や日本の投資家に会いに行くので、年130泊ほどはホテル暮らし。機内泊も含めると、年の半分くらいしか家にいません。日常の子育ては、ほとんど妻が頑張ってくれています。

「シンガポールで子育てしよう」と決めたきっかけは何ですか。

蛯原:自然な流れでしたね。私がこういう仕事をしていて、当面はシンガポールで生活することが分かっていたのですが、「家族は一緒に暮らす」というのが自然だと思っていたんです。時期を決めるきっかけとなったのは、妻の仕事の区切りというのが一番大きかったですね。

 教育環境の面でも、やはりモノカルチャーの中で育てるより、多様なバックグラウンドを持つ人たちと日常的に触れ合える今の環境で育てるほうが、これからの時代に合う資質につながると思っていました。

 子どもたちが通うインターナショナル・スクールは、幼稚園と小学校だけでも40カ国以上から生徒が集まっています。