海外赴任でも、週末は家族と日本で過ごす

小林:相互にうまく生かせているかはよく分かりません。でも一つ言えるのは、私の中では「仕事」と「子育て」は完全に境目がないということ。仕事で起きたことは、機密情報以外はすべて家でしゃべっていますし、職場でも家族の話をたくさんします。

 すると、結果的に自分自身がラクになるんです。大きな案件を抱えていて仕事がハードだという状況を妻がリアルタイムで理解してくれていると、子どもたちにも帰宅が遅くなる理由をうまく説明してくれる。

 一方で、会社のメンバーが「セイチュウさん、たしか今日は娘さんの誕生日ですよね。あとは僕らがやっとくんで、早く帰ってください」と声をかけてくれたりもします。

 公私の境目をなくした方が、双方がラクになるなと実感しています。だから部下のライフに対しても、できるだけ関心を持って理解したいと思っています。

子育てにおける夫婦間の連携が、とてもうまく取れている印象を受けます。小林さんが楽天の米国本社の社長や、アジア本社の社長時代をしていた海外赴任期間は、どのように乗り越えたのでしょうか。

小林:子どもの学校のこともあったので、私だけが単身で赴任していました。アメリカに約3年半、シンガポールに1年半。シッターさんのサポートがあったとはいえ、本当に妻が頑張ってくれました。

 私がやったのは、できるだけまめに帰ること。アメリカ赴任時代は2〜3週間に1回は週末に日本に帰っていました。金曜の夜にロサンゼルスを発つと、日本時間の日曜朝に東京に着くんです。それから16時間くらい家族と過ごして、その日の夜中にアメリカに戻る便に乗る。すると、現地時間の日曜夜に到着するから、月曜朝から普通に仕事ができるんです。だから、アメリカの連中は私が日本に帰っていることを知らなかったんですよ(笑)。

 シンガポール時代は、さらに渡航距離も時差も短いので毎週末帰っていました。あっちを金曜夜に出ると土曜朝には日本に到着でき、土日を家族と過ごして、日曜の深夜便でシンガポールへ。すると月曜の朝から働ける。ショートスリーパーという体質も幸運でした。それでも妻からすると、平日をすべて1人で回すというのは大変だったと思います。

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