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「バランス良く」「食べすぎない」

 ある栄養素を減らせば、ほかの何かが増え、過剰に摂取した分、各栄養素が持つ「負の側面」が顕在化していきます。

 水ですら飲みすぎれば「水中毒」という病気になって、低ナトリウム血症から死に至る危険性があります。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」。過剰に摂取していいものは、何一つないのです。

 厚生労働省と農林水産省は、望ましい食事内容を示した「食事バランスガイド」を2005年に策定しています。

 比較的健康な日本の中高年、約8万人を平均14.9年経過観察したところ、バランス良く食事している人は、していない人に比べて全死亡が15%、心疾患死が16%、脳卒中死が22%低下することが報告されています(1)。大規模な臨床研究で、実際にこれだけの結果が出ているのです。

 食事については様々な意見が世の中にあふれていますが、私はもっとシンプルなものだと考えています。

 「バランス良く食べる」、そして「食べすぎない(総カロリーに気をつける)」。結局、これだけで十分です。

 ではそこから一歩でも外れてはいけないのかというと、もちろんそんなことはありません。

 「大切な人の誕生日でたっぷり食べた。ケーキは2人分食べた」
 「大きな仕事が一段落ついて、スタッフみんなで焼き肉をガッツリ食べた。どれぐらい食べたかは記憶にない」

 人間ですから、そんなこともあります。

 時にはハメを外しても全く問題ありません。なぜなら、私たちは他者との関係の中で生きていて、そこでの喜怒哀楽の積み重ねが人生そのものだと私は思うからです。

「何でもいいから、とにかく1秒でも長く生きればいい」というわけではないはずです。

 時にはハメを外してもいいのですが、とはいえ、そのインパクトをできるだけ和らげる工夫もした方がいい。そのために、私たちができることが3つあります。

時々食べるから、ごちそうはおいしい

 1つ目は、前述した原則の確認になります。つまり普段から「バランス良く食べる」「食べすぎない」を実践して、体をいい状態に保っておくことです。

 人間の体には「ホメオスタシス」といって体の内部環境を一定に保とうとする仕組みがあります。血糖値が上がれば膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌される、血圧が上がれば腎臓でのナトリウムの再吸収を抑える、中性脂肪が増えれば筋肉や脂肪組織に取り込む……など、様々なシステムがバッファー(緩衝系)として働いています。

 このシステムを日ごろからいい状態に保っておけば、突発的な栄養素の過負荷にも耐えられるでしょう。

 そもそも、普段バランスのいい食事をしているからこそ、時々食べるごごちそうが、一層おいしく感じるのだと思います。

 「美食」は楽しいことですが、毎日続けばそれにも飽きて、次第に喜びは減っていくはずです。時々食べるから楽しいのです。これは食事に限らず、お酒や遊びについても言えることでしょう。

 大切なのはメリハリをつけること。「影があってこそ光に意味がある」と言うと大げさですが、それでも私にとっては人生を楽しむための神髄でもあります。