全4000文字

肥満になると運動したくなくなるワケ

 体重についても似たようなことが報告されています。

 身長170㎝の人の理想体重(BMI=22)は、1.7×1.7×22=約64kgです。170㎝、80kgの人は、64kgまで減量しないと意味がないかというと、もちろんそんなことはありません。

 特定健診(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導のデータによれば、1~3%の減量(80kgの人であれば0.8~2.4kgの減量)でも中性脂肪、悪玉コレステロール、善玉コレステロール、ヘモグロビンA1c(血糖を反映する指標)、肝機能が改善し、3~5%の減量(2.4~4.0kg)では、それに加えて血圧、尿酸なども改善したと報告されています(4)。

 「やるからにはしっかりとした目標を設定してやる」という気持ちは十分わかります。しかし「それが実現できなければやらない」というオール・オア・ナッシングの考え方は、やはり不合理でしょう。

 やるべきこと、考えるべきことが多い現代人の生活はさながらゲリラ戦のようなものです。完璧主義では身動きが取れなくなってしまいますので、実生活の中のスキマ時間で軽く運動し、なんとかうまく回していくしかありません。

 しかし「それでもやはり運動をする気にならない」という人もいると思います。実は、それには理由があります。

 肥満になると、レプチン(食欲を抑制するためのホルモン)が産生されて高値になります。そうすると、結果的に運動がもたらす脳内報酬が減弱し、自発活動が低下するメカニズムが明らかになりました(5)。

 つまり、肥満になると運動をするのが億劫(おっくう)になり、それがますます肥満を助長するという負のスパイラルが発生するということです。

 何となくそんな気はしていたという人も多いと思いますが、そのメカニズムが科学的に立証されたのです。

 もし肥満があって、運動する気にならないとしたら、それは「怠惰」のひと言で片づけられるものでもなく、そうさせてしまうメカニズムがあり、ある意味「自然なこと」なのです。

 ではそれをどう乗り越えればいいのでしょうか。次回、解説します。