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こんなにハードルが高い!? 糖尿病患者向けの運動ガイド

 日本糖尿病学会の『糖尿病治療ガイド2018-2019』によれば、「できれば毎日、少なくとも週3~5回、強度が中等度の有酸素運動を20~60分間行い、計150分以上運動すること」とあります。これが、かなりのボリュームであることは言うまでもありません。

 週末にまとめてやればよいという話でもありませんし、一般的な勤務体系の人がこれを実践することは相当ハードルが高いはずです。

 糖尿病という疾患がある場合に勧められる内容なので、単なる肥満の解消・予防とは確かに話が違います。しかし、いったん糖尿病になってしまえば、ここまでのものが求められるのです。

 どんな病気もそうですが、人間の体は健康状態が悪くなってきても、ギリギリまでは結構踏ん張ります。ただ、いったん堤防が決壊してしまうと、元の状態に戻るには、決壊する前に求められていた数倍の努力が必要なのです。

 だからこそ、そういった状況にならないように水際で食い止めること、つまり、健康が保たれているうちから前倒しして、少しの努力を引き受けておくことが大切なのです。

 運動は現在の問題を解決するためだけに行うのではなく、将来的な病気を防ぐため、さらには高齢になったときの寝たきりや筋力低下、転倒などを予防するためにも、今から準備しておくというスタンスが重要です。高齢で足腰が弱くなってきてから、いざ運動を始めようとしても、関節、筋肉、骨が負荷に追いつかない可能性が高いからです。

 運動習慣が全くない人が運動を始めるのであれば、第一にオススメできるのはウオーキングです。

 いきなり走りだして心臓に負担をかけるのは非常に危険ですし、膝などの関節を痛めると、運動習慣を身につける上で大きく後退することになってしまいます。ウオーキングが問題なくこなせれば、スピードを速足に変えてみて、意欲があればジョギングへ進んでもいいでしょう。

 さて、このように「運動をしましょう」と説明すると、しばしば「仕事が忙しくて時間が取れない」という答えが返ってきます。

 しかし、こうした運動は特にまとめてやらず、細切れでやってもいいと考えられています。例えば、10分のウオーキングを1日3回と、30分連続のウオーキングを比べたら、中性脂肪と血圧が同じぐらい改善したと報告されています(1)。また週のランニングが51分間未満、距離が6マイル(約10キロ弱)未満、回数が1~2回など、運動量が少なめであったとしても、全く運動しない群と比べて死亡リスクは低下したと報告されています(2)。

 厚生労働省が策定した「アクティブガイドーー健康づくりのための身体活動指針」では、今より10分多く体を動かすことを推奨しています。

 そしてそれにより、死亡のリスクが2.8%、生活習慣病の発症が3.6%、がんの発症が3.2%低下することが示唆されています(3)。

 たとえ少しであっても、やっぱりやらないよりは、やった方がいいのです。