糖質制限、カロリー制限「以外」の手も!
本研究では、減量効果だけではなく、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールの推移に関しても解析が行われています。
中性脂肪、HDLコレステロールに関しては、糖質制限食の方がカロリー制限食よりも、明らかに(=統計学的に有意に)改善させていましたが、LDLコレステロールに関しては差がありませんでした。
これらの結果を見ると、確かに糖質制限食の方が全般的に良い結果が出ています。けれど3点ほど、気になることがあります。
1. 本試験は、「糖質制限食」と「カロリー制限食」の対立という構図の中で語られがちですが、「地中海食」の健闘も見逃せません。その理由として、論文の著者は、食物繊維の摂取量が多いことと、飽和脂肪酸が少ない(オリーブ油や魚油が多い)ことを指摘しています。
「不飽和?オメガ?トランス?どの脂肪酸が危ないのか」でも解説した通り、どの脂肪酸を摂取するのかはかなり重要なポイントです。それを考えると、「脂肪はなんでも制限なく取っていい」という糖質制限食のスタンスを、無条件で肯定することはなかなか難しいことです。
2. 次に気になるのは、一般の生活を送る限り、 「糖質制限食」と「カロリー制限食」はしゅん別できないケースが多々あるということです。
例えば、ランチにたらこスパゲティやチャーハンを食べるとします。そのとき、ダイエットを意識するとしたらどうすればいいでしょう。たらこだけ食べるとか、チャーハンのご飯だけを残すなんていうことは不可能です。恐らく対応策としては、食べる量を減らす、ということになると思います。これは「糖質制限食」であるし「カロリー制限食」でもあります。
「私は糖質制限派なので、そもそもそんなものは食べない。昼は定食にしている」という場合も同じです。ダイエットのためには、定食のおかずや小鉢の量を減らすのではなく、主食のご飯の量を減らすことになるはずです。これも「糖質制限食」であり、総カロリーが減っているという意味では結局「カロリー制限食」なのです。
仮に残したご飯の分を補うようにたんぱく質や脂質を本来より多めに取るのであれば、確かにそれはカロリー制限食ではありません。
しかしその場合、塩分(たんぱく質をおかずとして増やせば、自動的にプラスで摂取することになる)や好ましくない脂肪酸の摂取量も上昇するでしょうし、尿酸値などにも目配りする必要が出てくるでしょう。
一般の人にとって「糖質制限」と「カロリー制限」がしゅん別しにくいのであれば、「糖質制限にしなくてはいけない」とか、「カロリー制限にしなくてはいけない」と無理にどちらかを選択する必要はないのです(本稿は糖尿病などの疾患のない健康な人が肥満を解消、予防するためにどうするかという趣旨であることをここでもう一度強調しておきます)。
基本的には、食べたいメニューを選べばいい。ただし選んだ上で、ダイエットのためにはどうすればいいのかを工夫すればいいのです。
メニューによっては糖質制限食になったり、カロリー制限食になったり、その両方になったりする。そして地中海食やDASH食のメリット(不飽和脂肪酸や魚介類)も意識しておく。そうやって融通無碍(ゆうずうむげ)に食生活を組み立てて対処していくのが、最も心情的に無理がなく、継続しやすいでしょう。
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