全3546文字

 前回(「『塩分摂取→興奮→血圧上昇』の流れ、知ってました?」)、血圧を下げるために日常生活でできる工夫として、減塩について解説しました。それ以外の工夫として、「DASH食」「減量」「運動」「節酒」などが報告されています。

 このグラフは、それぞれの要素がどのくらい血圧を下げるのかを表したものです。

 別々の臨床研究から得られたデータを並べているので、正確な比較・検討はできませんが、おおむねこういう傾向がある、ということです。

 血圧を下げる作用としては、DASH食が最も効果が高いとされています。そもそもDASHは、「Dietary Approaches to Stop Hypertension」、つまり高血圧を防ぐ食事の略で、野菜や果物、木の実、豆、魚、全粒粉のパンなどを多く取る食事法です。

 興味深いことに、本来のDASH食には「塩分を何グラム以内にせよ」といった制限はありません。

 それでもこれだけの効果があるのは、おそらく野菜や果物に含まれるカリウムによる、ナトリウムの排せつ促進作用や、DASH食によって結果的に減量することによる降圧作用が大きいのでしょう。

 運動も内臓脂肪を減らすことによって、血圧を上げる生理活性物質の分泌を減らすうえ、副交感神経を優位にして心臓の興奮を抑えます。

 アルコールと血圧の関係は多少複雑で、飲んだ数時間は血圧が下がるものの、習慣的に飲酒すると、血圧は上昇に転じるといわれています。おそらくアルコールそのものの作用に加え、一緒に摂取する食事の影響もあるでしょう。

 酒のツマミとなるものは、塩分が多く含まれる食品が中心です。焼き鳥店でもビストロでも、お酒が進むように味付けがかなり濃くなっているお店で、皆さんもしばしば食事をしていると思います。

 「DASH食」「減量」「運動」「節酒」など、それぞれの要素が血圧を下げるのは確かです。けれど、一つひとつの効果は、そこまで劇的なものではありません。

 塩分摂取量が多い人、高度の肥満の人など、高血圧の原因によって、軸になるアプローチが決まるものの、それぞれの項目を、無理のない範囲で少しずつ取り入れれば、相加的(各要素が互いに良い影響を与え合うという意味では相乗的)に効果が得られるでしょう。

 その結果、トータルとして血圧のコントロールを目指していけばよいのだと思います。

 本連載ではここまで4回にわたって、血圧について解説してきました。既にこれまでの連載のコメント欄でもいくつか質問が寄せられていますが、実際の医療の現場でも、患者さんからはしばしば「最適な血圧は人によって違うはずなので、診断基準(140/90未満)を設けることに意味があるのか」という質問を受けることがあります。

 この質問には、2つの解釈があり得ます。