昨年「糖質ゼロで、人間は生きていけるのか」という記事を掲載しました。こちらでも解説したのですが、メタボを遠ざける食事法において、「食物繊維」が重要な役目を果たすことは、間違いありません。これから2回にわたって、食物繊維の果たす役割について、詳しく解説していきます。
食物繊維の定義は、実は意外と難しいのですが、一般的には野菜、果物、穀物などに含まれる「人間の消化酵素では消化しきれない成分」のことを示します。
定義からも分かる通り、食物繊維は様々な成分を一つにまとめた「総称」です。それぞれの成分の役割も違いますし、一つひとつの名称を覚える必要もありません。ただ大きくは、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分けることができます。
不溶性食物繊維は、穀物や野菜、果物、豆、きのこ、海藻に多く含まれています。保水力が高いので、腸管の中で水分を吸収して膨らみ、腸の蠕動運動を促して、便通を良くします。
水溶性食物繊維は、海藻やこんにゃく、果物などに多く含まれています。食後の満腹感を持続させ、食べすぎを防ぐ効果があります。
身も蓋もない大雑把な言い方をすれば、食物繊維という消化できない余分なモノを食べている分、栄養素の過剰な摂取や吸収を防いでいる、という側面があるのです。
不溶性食物繊維だけ、もしくは水溶性食物繊維だけを含む食材というのは基本的にはありません。不溶性食物繊維を主体として、両方が混在しています。
ですから、「私は便秘がひどいから不溶性食物繊維だけ食べよう」とか、「ダイエット中だから水溶性食物繊維だけ食べよう」と意識する必要はありません。健康のために食物繊維を意識して食べる、というだけでいいのです。
便通を良くすること、食べすぎを防ぐこと以外に、食物繊維のメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
- 摂取量が多いほどメタボが少ない(1)
- 糖尿病のコントロールに有効(2)
- LDL(悪玉コレステロール)を下げる(3)
こういったメリットがあるとされています。いずれも、最終的には動脈硬化を予防します。そしてその結果、食物繊維を多く取る人は、食物繊維を摂取しない人に比べて、虚血性心疾患や脳卒中が40〜50%減ることが報告されています(4-5)。
「食物繊維の摂取が大腸がんの予防につながる」という話も、どこかで聞いたことがあると思います。
確かに食物繊維がブラシのように大腸の壁をゴシゴシとこすって汚れを落としてくれるようなイメージがわきます。しかしこの点については、予防につながるという報告と、予防にはつながらないという報告が多数入り乱れており、現時点では判定保留とされています(6-9)。
ともあれ、そんな様々なメリットが期待できる食物繊維の目標摂取量は、成人男性で1日20g以上、成人女性は1日18g以上とされています(「食事摂取基準2015」より)。
食物繊維を自分が1日に何グラム摂っているのかを正確に把握している人は、ほとんどいないでしょう。ただどの食品に食物繊維が豊富に含まれているかを知り、積極的に摂ることが重要です。
ではそれぞれの食品にどのくらい植物繊維が含まれているのか。次のページでマンガで見ていきましょう。
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