形はパクリ、品質は本物
このように「名創優品」のブランドとしての成り立ちは「日本というイメージ」のパクリとでも言うしかないようなものだが、考えるべきは、このブランドは単にモノマネの劣悪商品を売る「パクリブランド」ではなく、世界のマーケットでその品質の良さで人気を呼ぶほどの存在になっているという状況である。
4年ほど前、上海で住んでいたマンションの近くにこの店ができ、何度か買い物をしたことがある。当時から感じていたことだが、商品や店舗のデザイン、ビジネスのコンセプトなどは、日本人の視点で見るといかにも怪しげなのだが、品質は確かに決して悪くない。経営モデルは100円ショップに似ているが、商品は均一価格ではなく、日本円で150円(10元)から1500円(100元)ぐらいの幅がある。

とかく中国で売られている商品は「低価格=低品質」が相場だが、この店の商品は文具や食器、台所用品、アクセサリーなど、いずれも値段の割に中身がしっかりしており、お買い得感がある。つまり単に「パクリ」だから売れているわけではないのである。
個々の商品のデザインに関しては、これは想像だが、おそらく日本を中心に世界各地で売れている生活雑貨を買ってきて、その商品を研究し、デザインに「ヒントを得て」、どこかを自社風に「改良」して商品にしたものと思う。これも厳密に言えば「パクリ」かもしれないし、実際、「名創優品」と他社との間で係争が起きた事例もあると聞く。
しかし、現実の世の中ではこうしたやり方は世界中のブランドが、どの業界でも程度の差はあれ日常的に行っていることだろう。実際問題、他社の製品を参考にして後追いの類似商品を開発することと「パクる」ことの明確な境界を定めるのは難しいに違いない。
「日本の衣」をまとった中国企業
また各種報道によれば、この企業は在庫過多に陥らないよう、アイテム数を常に3000~5000の範囲に絞り込み、1人のプロダクトマネジャーが300アイテムの商品に責任を持ち、10数人のプロダクトマネジャーを葉氏が直接管理するという手法で品質を担保、毎月500を超える新商品を市場に出しているという。
また、店舗は直営店とフランチャイズの2種類があるが、加盟店に対して店の売上金の60%を、商品が売れた翌日に即、振り込むなど加盟店オーナーの立場を考慮した手法を取っている。そのため加盟希望者が多く、急速な店舗網拡大の大きな武器になっているという。どうやら経営手法は単なる「パクり」ではなく、かなり工夫を凝らし、努力している感じがある。
そうやって世界中のマーケットの情報を手際よく集め、自社で商品化したうえで、中国の巨大かつ効率の高い生産力を活用し、安価で高品質の商品を、大量かつ迅速に生産し、供給したのが「名創優品」である。創業者の葉国富氏は「ユニクロや無印良品の生産方式を詳しく研究した」という趣旨のことを中国メディアのインタビューで語っている。
つまり、日本企業、製品の強みを深く研究し、それを徹底的に模倣(学習)したうえで、さらに企業みずからが「日本の衣」をまとい、世界に打って出て大成功した――のが「名創優品」というブランドである。
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