やっているのは日本企業の「いいとこ取り」

 創業者の葉国富氏は1977年、湖北省生まれ。各種の報道を総合すると、葉氏は以前、もっと低価格、低品質の雑貨販売を手がけてそれなりに成功していたが、日本で上述のような企業のビジネスモデルに啓発を受け、「商売の本質は高品質の商品を薄利で売れる仕組みをつくることだ」と考え、「名創優品」を立ち上げた(ソースは中国メディアの報道、こちらなど)。

 つまり最初から完全に日本企業の「いいとこ取り」を意図してスタートした会社である。

 日本では、このブランドに対する一般的な評価は要するに「パクリ企業」である。それはある意味もっともなことだ。

 ロゴのデザインや字体はユニクロそっくりで、白で統一された店舗の内装もよく似ている。売られている商品のデザインはお洒落なものが多いのだが、パッケージに日本国内の住所が印刷されていたりして、露骨に「日本発」(「日本製」ではない)を強調している。店内には「Japanese Designer Brand」などと大きく書かれたりしていて、これも「日本製」とはうたっていないところがミソである。

 この会社のホームページに行くと、まず会社紹介に「名創優品は“日本デザイナーブランド”であり、2013年に中国に進出した」「東京で設立」とある。いつ創業されたのかはホームページには明確な記述がない。中国「進出」前に日本で商売をしていたのかはよくわからない(日本語版と中国語版では内容が違う箇所があり、以下は中国語版ホームページによる、2019年9月15日現在)。

 そして「共同創業者兼首席デザイナー」として三宅順也氏という人の大きな写真が掲載されている。実質的な創業者で法人の代表である葉国富氏より上の、筆頭ポジションだ。プロフィールには「高田賢三や山本耀司らを生んだ名門、文化服装学院を卒業後、急速に頭角を表し、日本の“自然の生活”派の代表人物」などといった趣旨のことが書いてある。

 しかし不思議なことにこの人物の名前を日本のグーグルで検索すると、「名創優品」関連以外のことは10ページ目までスクロールしても何も出てこない。ユーチューブには「名創優品」に関するインタビュー動画はあるので実在の人物には間違いなさそうだが、デザイナーとしての実績は見つけるのが難しい。どのような人物なのか不明で、要は日本人であれば誰でもいいのではないかと勘繰りたくなる。こういうやり方はいかにもあざとい。

次ページ 形はパクリ、品質は本物