「大国としての中国」
船長逮捕事件以来、間もなく10年になろうかという年月が経過した。その間の日本と中国の経済力、国際政治上の影響力は差が開く一方である。中国のGDPはすでに日本の2.5倍を超えている。閻学通氏の論法に拠るならば、中国は日本に対してすでに「大国的態度」を取る余裕をもち、大局に影響がない限り「細かな」原則には過度にこだわらない姿勢をとるようになったかに見える。
尖閣諸島の問題だけでなく、「南京」「靖国」といった歴史的な問題についても、国内政治への配慮から原則重視の姿勢は譲らないが、対日本のトーンは明らかに抑制されてきている。要するに中国の政治にとってこれらの問題は、現実的にはすでに事実上、急いで解決する必要は薄れてきているのである。
今年4月の自衛艦青島入港に際して、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙「環球時報」編集長、胡錫進氏は4月22日、自身のWeibo(微博、ミニブログ)で文章を発表した。胡氏は官製メディアにありながら、タブロイド紙というややカジュアルな立場から時に政府の本音を代弁する言論人として中国国内でも人気がある。彼の書いた文章の大意は以下のようなことである。
「日本の大使館が日の丸を掲げ、自衛隊の艦船が旭日旗を掲げるのは当たり前のことである。日中間の力関係はすでに歴史的な大反転が起きた。中国が辱めを受けた歴史は過去のものとなった。中国のGDPはすでに日本の2.5倍、軍事費は3倍以上ある。中国の前では日本は“小国”である。欧州の外交官たちと話をしても、彼らは異口同音に『私たちは小国だから……』と言う。日本が中国に脅威を与えられる時代は終わった。中国人は対日心理を徹底的に見直すべき時だ。自衛隊の皆さんの中国訪問を歓迎する。青島でのよい週末を!」
鼻持ちならない中華思想と言えばそうであろう。しかし現実はこういう時代になっている。中国人の対日観は、善しあしは別として、根本的に変わりつつある。この状況に日本人はどう向き合うか、それは自分で考えなければならない。
「日本人と中国人の間には誤解が多い。
お互いが相違点を理解し、一緒に仕事をすれば
必ずWin-Winの関係になれる。
本書はそのためにとても役立つ」と
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本連載と、10年に及ぶ「wisdom」の連載の中から厳選・アップデートしたコラムを「スジと量」で一気通貫に編集。平気で列に割り込む、自慢話ばかりする、自己評価が異様に高い、といった「中国の人の振る舞いにイライラする」「あれはスジが通らない」という、あなたの「イラッ」とくる気持ちに胃薬のように効き、スッキリとする。ユニークな中国社会・文化論です。
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