(写真:つのだよしお/アフロ)
(写真:つのだよしお/アフロ)

 朝日新聞は12月6日の朝刊に、毎年春と秋に実施している全国主要100社対象の景気アンケートの結果を掲載した(2022年秋の今回調査は11月14~25日が実施期間)。国内景気をどうみるかに関しては、「緩やかに拡大」という回答が22年春の59社から46社に減少。「足踏み(踊り場)状態にある」が37社から46社に増えて、これら2つの回答が同数になった。「緩やかに後退」が7社、「その他・無回答」が1社である。

 このアンケートで筆者が最も興味深かったのは、日銀の金融政策に関連する設問への回答分布である。

設問「日本銀行の黒田総裁への評価は」

回答「大いに評価する」(3社)、「ある程度評価する」(53社)、「どちらとも言えない」(17社)、「あまり評価しない」(4社)、「ほとんど評価しない」(2社)、「その他」(21社)

 「大いに」あるいは「ある程度」評価する回答を合計すると56社。このアンケートによると、主要100社における黒田東彦日銀総裁の「支持率」は56%である。

 同じ調査で「岸田政権の政策運営全般への評価は」という設問に対する回答分布は、「大いに評価する」(2社)、「ある程度評価する」(44社)、「どちらとも言えない」(22社)、「あまり評価しない」(10社)、「ほとんど評価しない」(1社)、「その他」(21社)であり、「支持率」は46%。黒田総裁を10ポイントも下回る。日本企業が苦しんだ円高からの脱却に日銀の異次元緩和が寄与したこと、岸田政権の下で防衛費増額の財源として法人増税が有力視されていることなど、いくつかの要因が影響したのだろう。

設問「次期日銀総裁に求める施策」

回答「賃金が上昇しやすい経済環境の整備」(27社)、「現在の金融緩和策の維持」(21社)、「新しい物価安定目標の設定」(18社)、「金融緩和策を引き締める方向で見直し」(6社)、「金融緩和策のさらなる拡大」(0社)、「その他」(47社)

 「その他」が半分近くに達しており、次期日銀総裁への要望は、企業ごとにばらつきがかなりあると推測される。ここではやむなく、「その他」以外の回答分布から単純に考えると、日銀が現在唱えている「賃金が上昇しやすい経済環境の整備」と、「現在の金融緩和策の維持」を選んだ会社(合計48社)は、日銀の金融政策運営の基本線について、広い意味で「現状維持派」とみなし得る。一方、「新しい物価安定目標の設定」と「金融緩和策を引き締める方向で見直し」を選んだ計24社は「改革派」と言えるだろう。「現状維持派」の社数は、「改革派」のちょうど倍である。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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