オレゴン州ポートランドのアイスクリーム店で「ドルの強さについては懸念していない」と語ったバイデン大統領(写真=ロイター)
オレゴン州ポートランドのアイスクリーム店で「ドルの強さについては懸念していない」と語ったバイデン大統領(写真=ロイター)

 金融引き締めに積極的な「タカ派」の筆頭格としてFRB(連邦準備理事会)による急ピッチの利上げに関する議論を事実上リードしてきたのが、米セントルイス地区連邦準備銀行のブラード総裁である。今年は金融政策を決定するFOMC(米連邦公開市場委員会)において投票権を有していることもあり、市場の注目度が一段と高くなっている。

 ブラード総裁の昨年以降の発言内容をあらためて振り返ってみると、彼が最初から確信を持ってFRBのタカ派路線をリードしてきたわけではないことが分かる。むしろ、消費者物価指数(CPI)上昇率の急加速など、当初想定されていなかった物価動向に直面する中で、パウエルFRB議長らに先んじて状況認識を切り替えた上で、金融政策運営に関する主張の内容を段階的に強めてきた。

 今回の利上げ局面における政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの最終的な到達点を、金融市場では「ターミナルレート」と呼んでいる。その水準についてブラード総裁は、まだインフレ率の上昇が一過性とみられていた昨年11月の時点では、新型コロナウイルス感染拡大前の1.5~1.75%までの利上げで十分だと説明していた。

 しかしその後、今年の3月18日には「3%以上」、4月7日には「3.5%」、7月15日には「3.75~4.00%」、9月のFOMCを経た後の27日には「4.5%程度」(より正確には4.5~4.75%)へと、ブラード総裁が口にするターミナルレートの水準は、徐々に引き上げられてきた。景気を熱することも冷ますこともないとされる中立水準(FRBの想定で2.5%)を超える、景気に対して「抑制的(restrictive)」な、要するに景気を押し下げる水準まで利上げを行うことにより、インフレ圧力をしっかりと押さえ込む狙いである。

 10月13日に発表された9月のCPIで、総合指数は前月比プラス0.4%になった。前年同月比はプラス8.2%で、3カ月続けての伸び率鈍化である。だが、事前の市場予想と比べると上振れした。また、振れが激しい食品・エネルギーを除いた「コア」では前月比プラス0.6%になり、やはり予想比で上振れとなった。前年同月比はプラス6.6%に加速し、1982年8月以来の上昇率である。さらに、この日はミシガン大の10月の消費者信頼感指数速報も発表され、人々の1年先と5年先の期待インフレ率が、ともに上昇した。

 これだけインフレ圧力の根強さを示す数字が並ぶと、FRBの利上げ姿勢が一段と強まるのではないかと、市場は当然警戒する。ターミナルレートは5%前後に達するのではないかという見方が浮上する中で、米国債利回りは全般に上昇。為替市場ではドル高が進行し、円相場は一時1ドル=151円台になった。

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