IMF年次総会で発言するゲオルギエバ専務理事(右)(写真:AFP/アフロ)
IMF年次総会で発言するゲオルギエバ専務理事(右)(写真:AFP/アフロ)

 米連邦準備理事会(FRB)による「金利」と「量」の両面からの金融引き締め策、すなわち急速な利上げと量的引き締め(QT)の同時進行が、他の国々へと波及(スピルオーバー)しており、世界経済がさらに悪化する見通しが強まっている。

 IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事は10月6日、2023年の世界経済の実質成長率見通しについて、7月時点の前年比プラス2.9%からさらに下方修正することを明らかにした。世界の3分の1の国が23年にかけて2四半期連続のマイナス成長(テクニカルな景気後退)に陥る恐れがあるという。その後、プラス2.7%への下方修正が実際に発表された。

 そうした世界経済全体の厳しい流れに直面している金融市場は、不安定かつ過敏な状態に陥っている。9月下旬には英国市場で、一時「トリプル安」が発生。それとは別に、欧州の大手金融機関の経営不安が材料になる場面も出ている。ウクライナ戦争の終着点は見えておらず、ロシアによる限定的な核兵器使用というリスクシナリオも取り沙汰されている。

 今は、何か材料が出た場合の相場の振れが大きくなっており、その主因は市場の「流動性」低下にあるといえる。想定外の材料が出てくると、そのサプライズが増幅される形で相場変動が大きくなりやすい。実に危うい状況だ。

 ここで言う「流動性」とは、「現金や預金に代表される、流動性の高い資産にマネーを逃避させる」といった使われ方をするものとは異なる。「市場流動性」とも呼ばれる、「金融市場における取引の容易さ」を意味する。

 「流動性の高い市場とは、大口の取引を小さな価格変動で速やかに執行できる市場である」という使われ方で引き合いに出されることが多い。実際に起きていることを例えにして話すと、大口の売り注文が米国債市場に持ち込まれると、買い注文に厚みがなく、売り注文の価格よりもかなり低い価格水準にパラパラと買い注文が並んでいる、いわゆる「スカスカ」の状態なので、売り方がそれでも売りを実行しようとすると、相場の下落幅がかなり大きくなってしまう。日々の値動きは荒くなり、相場の変動率(ボラティリティー)が上昇した状態になる。すると、買いにせよ売りにせよ、市場でポジション(持ち高)を抱えているだけで、損失を被る潜在リスクが高まってしまう。

 そうなると、相場の水準が合理的に考えた場合押し目買いに適している時であっても上記のような市場の脆弱なコンディションが続くと、水準修正が行われる市場のメカニズムが働きにくくなってしまう。

 さらに、そうした不安定な地合いの中であっても、あえて米国債に買いを入れる場合、当初の想定を超えるFRBの利上げ姿勢への警戒感などから相場が一段と下落してしまうリスクがある。買いを入れたプレーヤーは保有するポジションに多額の含み損を抱えてしまい、そのまま身動きがとれなくなるか、損失確定の売りを入れてそのポジションを放棄せざるを得なくなる。

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