欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、難しいかじ取りを迫られる(写真=AFP/アフロ)
欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、難しいかじ取りを迫られる(写真=AFP/アフロ)

 世界的に「インフレ」が問題になっており、各国の当局が対応に苦慮している。食料やエネルギーといった生活必需品の値上がりは庶民の懐を直撃する。所得の多寡で言えば、消費支出額に占めるそれら必需品の比率が高い低所得層に及ぶダメージが、中高所得層よりも大きくなる。それが政治的不満に結び付くとポピュリズムが勢いを増し、選挙などで多数派となれば政治情勢が不安定化する恐れがある。

 インフレ、すなわち物価上昇率の急上昇は当初、「供給側(サプライサイド)に主な原因がある一過性のもの」と考えられた。「供給制約」と総称される出来事は枚挙にいとまない。新型コロナウイルス感染拡大の中で、働くのをいったんやめる人が増えるなどして労働力が不足する、ハイテク製品の需要がにわかに増える中で半導体が不足する、コロナ感染の影響で工場閉鎖が起こってサプライチェーンが混乱する、港湾労働者の不足で荷揚げ作業が滞って積み荷を降ろせない船が急増したため輸送に使える空き船舶が不足する、などなど。需要と供給のバランスがひっ迫すると、モノの値段が上がる。労働力不足で賃金が上がり、サービス価格の上昇も発生する。

 しかしその後も、こうした供給制約は解消されないのみならず、ますます悪化の一途をたどっている。そして2月にロシア軍がウクライナに侵攻した結果、原油や天然ガス、穀物、非鉄金属など、さまざまな資源の価格が一斉に急上昇したのである。

 EU(欧州連合)の経済にとって最も重要なエネルギー源である天然ガスは、ウクライナ侵攻よりも前から値上がり傾向にあった。異常気象で例年のように風が吹かず、風力発電の発電量が不足し、天然ガスや石油、石炭といった化石燃料への依存度が高まっていたのである。そこに、ロシアのウクライナ侵攻が起こった。

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