(写真=ロイター/アフロ)
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 地球温暖化対策を急ぐ機運が強まる中で、化石燃料への投資額が減少している。ロシアによるウクライナ侵攻も長期化している。こうしたさまざまな要因がエネルギー価格の高騰を引き起こし、欧米や日本では国民の暮らしが脅かされている。

 特に、経済制裁への報復としてロシアから海底パイプライン「ノルドストリーム1」経由の天然ガス供給を止められている欧州では、暖房用のエネルギー消費が増える冬場を前に、電気代高騰をはじめとする物価高に対する危機感が非常に高まっている。各国政府は、地球温暖化対策を一時棚上げしてでも国民生活を守ろうと、緊急政策を打ち出している。

 ドイツ政府は9月4日、総額650億ユーロ(1ユーロ=144円換算で約9.4兆円)の家計支援策を追加で実施すると発表した。盛り込まれた内容は、世帯の人数に応じて暖房費を補助する住宅手当の積み増し、年金受給者や学生への一時金支給、子ども手当の増額などだ。鉄道などの公共交通機関が定額で全国乗り放題になる特別チケットの販売も続ける予定となっている。ただし、値段は月額9ユーロ(約1300円)から月額50~70ユーロ(約7200~1万100円)に引き上げられると報じられている。

 今回打ち出されたドイツの物価高騰対策は第3弾。以前の2つと合わせると対策にかけたコストは総額950億ユーロ(約13.7兆円)に上る。ショルツ首相は記者会見で、「私たちは人々の不安を非常に真剣に受け止めている」と強調。支援策により「この(エネルギー)危機を乗り越え、国を安全に導く」と述べた。

 翌5日、ドイツのハーベック副首相兼経済・気候保護相は、「脱原発」方針の見直しを表明。この方針に基づいて、今年の年末に稼働停止予定だった原発3基のうち2基について、23年4月半ばまで非常用として発電可能な状態を維持する考えを表明した。冬場のエネルギー危機を乗り切るための備えを拡充したわけである。ロイター通信によると、エネルギー不足への懸念から脱原発の延期を求める声が、ドイツ国内で拡大していた。

 9月8日には、EU(欧州連合)からの離脱後著しい労働力不足が起こり、物価高が欧州大陸諸国よりもさらに深刻となっている英国で、規模の大きな対策が打ち出された。

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