円安進行で、エネルギーや食品の価格上昇が人々の生活を圧迫している(写真=ロイター/アフロ)
円安進行で、エネルギーや食品の価格上昇が人々の生活を圧迫している(写真=ロイター/アフロ)

 金融市場の一部、特に海外投資家の間では、物価高に対する人々の不満が膨らんでいき、それが日銀へと向かうようなら、異次元緩和の修正を日銀は余儀なくされるのではないかという見方がある。だが、果たしてそうだろうか。筆者はかなり懐疑的である。

 社会調査研究センターと毎日新聞が5月21日に行った世論調査で、日銀の金融緩和政策についてどう思いますかという設問への回答分布は、「続けるべきだ」(29%)、「見直すべきだ」(44%)、「わからない」(26%)になった。緩和見直し派が4割強で、最も多い。同じ調査機関による次回6月調査(18日実施)には上記の設問はなかったものの、岸田政権の物価対策の評価については、「評価しない」(62%)が「評価する」(14%)を大きく上回った。

 もう1つ、日本経済新聞とテレビ東京が6月17~19日に行った世論調査を取り上げたい。「あなたは日銀が金融緩和を続けるべきだと思いますか、思いませんか」という設問への回答分布は、「金融緩和を続けるべきだ」(36%)、「金融緩和を続けるべきではない」(46%)、「いえない・わからない」(13%)になった。緩和打ち切り派が多数派で、緩和継続派を10%ポイント上回った。

 上記の2つの世論調査はいずれも、漠然と「日銀の金融緩和(政策)」について尋ねている点で、設問に曖昧さというか、弱点のようなものがあるように思う。調査回答者の中には(おそらくまれになるのだろうが)金融政策をよく見ている人がいて、長期金利変動許容幅上限引き上げやフォワードガイダンス書き換えなど、政策の一部見直しが望ましいと思うものの、異次元緩和の枠組みあるいは日銀の金融緩和自体は続ける方がよいと考える人がいるだろう。そうした人がどの選択肢を選ぶのかは判然としない。

 また、そうした金融政策の専門家ではない多くの人々の移ろいやすい面もはらんだ多数意見には安易に流されずに金融政策を運営するところにも、中央銀行の独立性の本質があるとも言える。

 為替市場で円安・ドル高が急進行する中でも、世界的な利上げの流れに日銀は巻き込まれることなく、6月17日の金融政策決定会合で金融政策を現状維持とした。仮に、黒田日銀が(政府から内諾を得た上で)政策運営のスタンスをこの日に急に変えて、マイナス金利解除などの金融引き締め策を突如決定していたら、どうなっただろうか。世界経済の先行きに関する金融市場の不安心理は増幅されて、株価の一段の下落を伴う大きな混乱が引き起こされていただろう。だが、日銀がそうした行動に出ることはなかった。日銀による現状維持の決定は、各国中央銀行の動きを材料に大きく揺れ動いた波乱の週の最後に、一種の「歯止め役」として機能したと言える。

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