ロシア中銀の政策にも注目(写真:ロイター/アフロ)
ロシア中銀の政策にも注目(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアとウクライナの戦争状態、そして米国や欧州諸国が武器・弾薬や情報を提供してウクライナ軍を支援しながらロシアに対して経済制裁を発動している「代理戦争」的な状況は、このまま長引く可能性が高まっている。

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は4月5日、下院軍事委員会の公聴会で、ロシアとウクライナの戦争は「少なくとも数年単位になる」と述べ、長期化するとの見通しを示した。

 戦況の面では、ウクライナ東部ドンバス地方でロシア軍が近く、大規模な攻勢に出るとの観測が強まっている。親ロシア派勢力が一方的に独立を宣言しているドネツク、ルガンスク両州のできるだけ広い地域をロシア軍が占領し、かつクリミア半島への回廊を確保する上で重要な都市であるマリウポリを完全に支配下に収める狙いである。

ロシアの記念式典は例年通り

 ウクライナ軍は、米欧から供与された対戦車兵器などを用いながら、徹底抗戦する構え。ロシアでは、5月9日の対独戦勝記念日の記念式典開催は例年通りと発表されており、プーチン大統領の演説も行われる見通し。「ウクライナ侵攻を『ネオナチとの戦い』と主張するプーチン大統領は、式典で戦果をアピールするためウクライナ東部の制圧を目指して攻勢をさらに強める可能性があります」(テレビ朝日)といった報道が出ている。

 そうした中、米欧などが発動している対ロシア経済制裁の効果には限界があることが、一層浮き彫りになっている。4月11日にルクセンブルクで開催された欧州連合(EU)外相理事会では、「複数の加盟国からロシア産石油の禁輸を求める声があがったが、加盟国の立場の違いから合意には至らなかった」「一方で一部の加盟国からはウクライナへの武器支援を強化するよう訴える声があった」(日本経済新聞)。石炭の禁輸では合意できたものの、経済的な影響がより大きい石油では、全会一致が必要な合意は得られなかった。

 ルクセンブルクのアッセルボルン外相は同日、「今は基本的に、制裁か武器か、どちらがより重要かを判断する問題に直面している」「私の結論は、今では武器だ。2カ月前であれば、こんな結論を出すなど狂気の沙汰だと一笑に付しただろう」と、記者団に述べた(ブルームバーグ通信)。EU加盟国の高官が対ロシア経済制裁の効果に限界があることを、明確に認めた一コマである。

 とはいえ、「経済制裁がダメなら武器供与」が、事態打開の切り札になるわけではない。むしろ、ウクライナ軍の抗戦能力を高めることにより、ロシアとの戦争が長引く(ウクライナが負けない)方向に寄与することになる。

 その一方で、ウクライナ軍がロシア軍を自国の領土から完全に追い出すには、武器供与による支援だけでなく、米国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍隊を現地に派遣することが必要だろう。だがそれでは「第3次世界大戦」シナリオの実現可能性が高まってしまう。バイデン米大統領は引き続き、米軍のウクライナ派兵はタブーとしている。

 この間、外国為替市場では、ウクライナ侵攻・対ロ経済制裁発動をうけて対ドル・対ユーロで一時急落していたロシアの通貨ルーブルが反発し、侵攻前の水準を回復した(図1)。

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 これをうけてロシア中央銀行は、自国通貨防衛のために発動していた緊急措置の一部を解除した。2015年にユーロマネー誌が「今年の中央銀行総裁」に選ぶなど有能ぶりが米欧金融界でも知られているエルビラ・ナビウリナ総裁(女性)が、その手腕を発揮した結果と言えそうである。以下、本稿ではこの問題の主な経緯を説明しておきたい。

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