衆院本会議で発言する岸田文雄首相(写真:ZUMA Press/アフロ)
衆院本会議で発言する岸田文雄首相(写真:ZUMA Press/アフロ)

 2022年度の政府予算案は、記録的なスピードで衆議院を通過した。2月22日の衆院通過は、戦後最速だった1999年度予算案の2月19日に次ぐ、過去2番目の速さである。衆院を通過して参院に送付された後、30日以内に参院が議決しない場合は衆院の議決が国会の議決になるという予算案自然成立に関する憲法の規定から、予算案の年度内成立が早い段階で確定した。

 そうした中、「次の経済対策」の気配が3月上旬から漂い始めた。7月の参院選よりも前に経済対策を打ち出そうという空気が感じられる。次の対策(あるいは2022年度補正予算案)の規模感は現時点で「10兆円程度」となっているが、最終的にはもっと大きな金額になるのではないか。

 整理すると本稿執筆時点までに、経済対策に関連する以下の動きが出ている。

◇野党でありながら予算案に賛成票を投じるなど、このところ自民党への接近が目立つ国民民主党の玉木雄一郎代表は、3月8日の記者会見で、資源価格などの上昇に伴う経済低迷の懸念に関し、「追加の経済対策について政府に検討を促したい」「最低でも10兆円ぐらいの(規模の)対策が必要だ」と述べた。ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除でも不十分だとして、さらなる対策を要望すると報じられた。

 国民民主党の榛葉賀津也幹事長は翌9日に国会内で、茂木敏充自民党幹事長および石井啓一公明党幹事長と会談。新型コロナウイルス禍やウクライナ情勢を踏まえ、22年度予算案が成立した後、原油高対策を含む10兆円規模の新たな経済対策を検討するよう求めた。

◇ブルームバーグ通信が3月9日に配信した記事によると、安倍晋三元首相のアドバイザーである本田悦朗元内閣官房参与は7日のインタビューで、日本経済のデフレからの完全脱却と長期停滞の克服には、財政出動と金融緩和を一体で進める必要があるとしつつ、10兆円規模の22年度補正予算案を早期に編成するよう提唱した。

◇経済政策を巡って岸田文雄首相に助言している原丈人元内閣府参与は3月10日、オンラインで開催されたフォーラムで、医療や防災インフラに年間10兆円規模を支出し、財源として「公益国債」を発行する案を提示した。

「公益資本主義が新しい資本主義に影響」

 中小企業を含めた経済活性化には分配政策だけでは不十分であり、財政出動で需要をつくり出すべきだと主張。「いろいろなインフラに国民の資金を使い、10、20、30年後の日本を豊かにしていく」と強調した。そうした自身の考えは「岸田首相にも勧めている」という。ブルームバーグ通信は「岸田首相とは外相時代から交流があり、提唱する『公益資本主義』は、岸田政権の『新しい資本主義』に影響を与えた」と解説する記事を配信した。

◇公明党の北側一雄副代表は3月10日の記者会見で、「まずは新年度予算案を早く成立させることが第一だが、この予算案には、編成したときに想定されていなかったウクライナ情勢による経済や生活への影響は盛り込まれていない」と指摘。「原油はもちろん、小麦など、ほかの原材料価格の高騰もあり、どう経済対策を打ち出すかは近々の大きな課題だ。しっかり検討したい」と述べ、追加経済対策の検討が必要だという認識を示した。

 上記の一連の動きに対し、鈴木俊一財務相は3月11日の閣議後記者会見で、「政府としては現在、22年度の本予算の国会審議をお願いし、その早期成立に尽力しているところ」「経済対策の策定を検討しているわけではない」と述べるにとどめた。

 しかし、経済対策に向けた動きは、予算案成立直前の段階でさらに広がった。

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