ジョー・バイデン米大統領は、ロシア産原油などの禁輸を発表したが…(写真:AP/アフロ)
ジョー・バイデン米大統領は、ロシア産原油などの禁輸を発表したが…(写真:AP/アフロ)

 ロシアがウクライナに侵攻してから約3週間が経過した。停戦協議が断続的に行われているものの、ウクライナの「非武装化」「中立化」に加え、クリミア半島におけるロシアの主権承認などもプーチン大統領は要求しており、和平実現へのハードルは高い。

 日本でも関心が高いウクライナ情勢について今回は、「戦時経済」「対ロ経済制裁の効力」の2点から、筆者の考え方をお伝えしたい。

 まず、ロシアのウクライナ侵攻をうけて、米国や欧州諸国が「戦時経済」へ移行するのかどうかという問題である。なお、ロシアの方は、国内が「着実に戦時体制に移行しつつある」(3月4日付 朝日新聞朝刊)と報じられている。

 ロシアがウクライナに侵攻し、欧州の国際秩序を軍事力によって一方的に変更しようとする動きを見せたことは、歴史的に大きな意味を持っているように思う。民主主義陣営と専制主義(あるいは強権主義)陣営の対立は「通常戦力による局地的な代理戦争」へとエスカレートした。プーチン・ロシア大統領は、核戦力を用いた脅しさえかけている。

 米国や北大西洋条約機構(NATO)諸国がウクライナへの直接派兵というオプションを排除しているため、米国とロシアの軍隊が直接の戦闘状態に入り第3次世界大戦的な状況へと進む道筋はふさがれているものの、米欧はウクライナに対して武器などによる支援を行っており、ロシア部隊の進軍が事前の計画通りに進まない大きな理由になっているようである。

 米国のバイデン大統領による3月1日の一般教書演説について時事通信は、「ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領との対決姿勢を鮮明にし、内外に連帯を呼び掛ける『戦時大統領』の振る舞いを見せた」と報じた。

 「米国では有事の際、軍最高司令官である大統領の下に国民が結集する伝統がある」「米国の戦時大統領としては、2001年の米同時テロ後に『対テロ戦争』を宣言したブッシュ(子)大統領(当時)の支持率が約9割に達した例がある。ブッシュ氏は03年の一般教書演説で、イラク侵攻を主張した」「トランプ前大統領も新型コロナウイルスへの対応で、自らを『戦時大統領』と規定した」と、この記事は続けた。

 米国のある有名な経済調査会社は2月下旬、欧米経済が戦時体制に移行することを覚悟しなければならないとの見方を示した(2月25日、時事通信)。「ロシアのプーチン大統領の声明について、われわれは米国およびその同盟国のNATOに対する宣戦布告と解釈した」「ロシアのウクライナ侵攻に対し、バイデン政権は経済的な報復を始める方針だが、ロシアの軍事戦略やプーチン政権を揺るがすことができるとは思わない」「今後、欧州、または米国も経済が戦時体制に移行することを覚悟しなければならない」「歴史的に見て、各国政府は戦時資金を調達するため、国債を発行してきた。われわれは米連邦準備制度理事会(FRB)、英イングランド銀行(BOE)、欧州中央銀行(ECB)が金融政策の軸足を戦時体制に移行するとみている。今後数年間にわたる量的緩和や低金利政策導入の可能性がある」といった、刺激的な内容である。

プーチン大統領は経済制裁にも動揺せず

 では、その後の現実の動きはどうか。米欧の対ロシア経済制裁は、天然ガスのロシアからの購入をできるだけ維持したい欧州の事情があるため、踏み込み不足の内容にとどまっている(「国際決済ネットワーク国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除」といった見出しで日本のマスコミは一時期こぞって報じたが、この表記はミスリーディングだと、筆者は日経電子版「Think!」欄でいち早くコメントした)。プーチン大統領が経済制裁を受けて動揺している兆しは見えていない。

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