レガシーづくりのため? ウクライナ侵攻を開始したロシア・プーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)
レガシーづくりのため? ウクライナ侵攻を開始したロシア・プーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力支配地域に設立された「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名した上で、これらの「共和国」とロシアの友好相互援助条約に調印した。

 条約にのっとり、ロシアはこれらの「共和国」内に軍事基地を建設する権利を持った。プーチン大統領は早速、「平和維持」を目的として軍を派遣するよう国防省に指示を発した。この時点では親ロ派武装勢力支配地域へのロシア正規軍進駐にとどまるのではないかと筆者はみていたのだが、そうではないことが数日後に明らかになった。

 ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランス4カ国によるウクライナ東部紛争解決の道筋を定めた2015年の「ミンスク合意」は崩壊した。合意はもはや存在しないと22日にプーチン大統領は明言した。ウクライナ政府が親ロ派支配地域に「特別な地位」を与えることが、この合意には盛り込まれていた。高度な自治権付与を意味すると解されていた。

 だが、自国の分裂を助長するような動きをウクライナ政府はよしとせず、プーチン大統領はそのことを非難し続けていた。そこにロシアがつけ入るスキがあったとも言える。

 2つの「共和国」への国家承認からさほど間を置かず、24日にロシアはウクライナに対する広範囲な軍事攻撃に踏み切った。ウクライナ全土を占領する目的ではなく、軍事的にウクライナを無力化する狙いからである。キエフ近郊を含むウクライナ空軍の防空施設などを先制攻撃して制空権を握ろうとしたほか、ウクライナの主要な港湾都市への上陸作戦も実行されたようだ。

 欲しいものを手に入れるために冷徹に手を打ってくるプーチン大統領に対して、米欧の手持ちのカードはそう多くはなく、手詰まり感が漂う。

説得力を持たない米国

 24日の軍事侵攻よりも前の段階で、バイデン米大統領が自ら発表したものを含めて米国による対ロシア経済制裁の内容がさほど強力なものでなかったことに関しては、「ロシアによる本格的な軍事侵攻に備えて切り札を温存した」「強いカードを発動しないでおくことによりロシアの行動を抑止する効果を期待した」といった説明が、マスコミ報道の中に散見されていた。だが、そうした説明に、説得力はほとんどなかった。

 制裁カードが潤沢にあるのならば、事態の推移に応じて出していけばよいはずである。ロシアが「ミンスク合意」を破棄した場面は、1つの大きなヤマ場だった。

 だが、ロシアのエネルギー産業を制裁対象にすることには、ロシアからの天然ガス輸入への依存度が高い欧州連合(EU)の側に、強い抵抗感がある。

 銀行間の国際決済ネットワークからロシアを排除してしまうという選択肢もある。だが、これもまた、ロシアと経済・金融面でつながりが強い欧州諸国の経済・金融システムにもたらされ得るダメージを無視できない。

 手持ちの使えるカードが少ないがゆえに、臨機応変に出すことができなかった。急いで出してしまうと事態が一層深刻化した際に対処するカードがなくなると危惧されたのが、実情だろう。そうした米欧の足元を見透かしたロシアは、ついに自信を持って軍事行動に出たというわけである。

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