米連邦準備理事会、ジェローム・パウエル議長の今後の立ち位置やいかに(写真:U.S. Federal Reserve Board/ロイター/アフロ)
米連邦準備理事会、ジェローム・パウエル議長の今後の立ち位置やいかに(写真:U.S. Federal Reserve Board/ロイター/アフロ)

 半導体の不足など供給面に制約があるにもかかわらず、新型コロナウイルス禍からの景気回復が想定を超えるペースで進んだ結果、米国やユーロ圏などでは物価の上昇率が足元でかなり高くなっている、例えば、米国の1月の消費者物価指数(CPI)は総合で前年同月比プラス7.5%になった(1982年2月以来の上昇率)。

 中央銀行の金融政策は、利上げなど金融引き締めに積極的なスタンスである「タカ派」へと傾斜してきており、そうした考え方の持ち主が発するコメントが大きく報道されて、市場で材料視される場面が増えた。

 米国で金融政策を決定する会合である米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の中で、いま最も注目を集めているタカ派が、ブラード・セントルイス地区連邦準備銀行(地区連銀)総裁だろう。

 高いインフレ率への危機感と迅速な対応の必要性を強く前面に出し続けているブラード総裁の主張に、ワシントンに本部ビルがある米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長らが追随する流れになっており、ブラード総裁を先導役と形容する向きもある。しかも、輪番制の中でブラード総裁は、今年のFOMCで金融政策を決定する際の投票権を有している。

「はるかに機敏かつ敏感にならなくてはならない」

 そのブラード総裁は上記の1月分CPIが発表された後にタカ派姿勢をさらに強めており、「米国でインフレ圧力が続いていることを示す」「40年ぶりの高インフレだ。今後はデータに対し、はるかに機敏かつ敏感にならなくてはならないと考える」と発言。3月半ばに開催される次回の定例のFOMCまで待たずに、緊急の会合を開いて利上げを決める道筋にも言及した。

 FRBのバランスシートを縮小する量的引き締め(QT)についても、かなり速いペースでの縮小、および満期が到来して現金償還された部分の別の債券への再投資を抑える手法から、さらに踏み込んでいる。

FRB保有債券の売却にも踏み込む

 FRBが保有する債券の売却についても「FOMCには可能性の1つとしてこれを検討してもらいたいと強く期待している」「望んでいたようにインフレ率が鈍化していないため、必要ならそれも可能になるようにだ」などと述べ、緊急対応として支持する考えも示した。

 FRB議長有力候補として名前が挙がったこともあるサマーズ元財務長官についても、タカ派的な発言が目立っている。

 1月分のCPI発表後にサマーズ氏は、「FOMCは量的緩和(QE)を終了させるため臨時会合を開くべきだ。今すぐにだ」「インフレ率が7.5%に達し、労働市場は過去数十年で最も逼迫(ひっぱく)しているのに、中央銀行はなおバランスシートを拡大させている。全くばかげている」と述べた。3月まで待たずに量的緩和を終えて、インフレ抑制への強い決意を示すべきだという主張である。

 もう1人、民主党内の穏健派(中道派)であり、バイデン政権が推進する気候変動・社会保障関連歳出法案「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」への反対姿勢を貫いてこの法案を暗礁に乗り上げさせたマンチン上院議員も、強力なインフレ対応をFRBに求め続けている一人である。2月13日にマンチン上院議員はSNSで、FRBはインフレとの闘いにおいて煮え切らない態度をやめて、真正面から取り組む必要があると述べた。

 大西洋をはさんだ向こう側のユーロ圏でも、ラガルドECB(欧州中央銀行)総裁が年内利上げ実施の可能性を排除しないスタンスに2月3日の記者会見で切り替えたことをうけて、タカ派からのトークへの注目度が高まった。

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