- (A)コスト効果(企業・家計による資金調達コストの増減を通じた影響)
- (B)アナウンスメント効果(FRBのスタンスが明示されることによる心理的影響)
- (C)株価経由の効果(家計への逆資産効果、ファンドの投資スタンスの慎重化など)
上記(A)の関連で言うと、社債やコマーシャルペーパー(CP)の発行など企業による資金の直接調達では、FRBによる政策変更からのラグは小さい。市場金利全般の変動が資金調達コストへ迅速に反映されるからである。
大きめのラグが出てくるのは、銀行など金融機関からの借り入れ(間接調達)だと考えられる。固定金利で受けている融資の満期が到来した際、その先も企業が借り入れを行う場合には、利上げを受けて変化した市場金利の水準に加え、場合によっては以前よりも大きなスプレッド(信用度に応じた上乗せ金利)が適用されることになる。
一方、上記(B)のアナウンスメント効果は、迅速に情報が伝達する現代社会では、即効性がかなり高いと見るべきだろう。
今回最も問題になるのは、上記(C)である。FRBによる過去の利上げ局面では、利上げが開始されてもなお金融緩和状態が続いている、あるいはその程度の利上げなら経済・企業業績の好環境はなお維持されるという楽観論ゆえに、株価は上昇をしばらく続けることが多かった。だが、今回はそうした経験則は、あまりあてはまらないのではないか。
FRBなど主要中銀のバランスシート拡大、および株高への「不干渉」路線ゆえに、米国の主要株価指標は最高値を何度も更新し、それを受けた「リスクオン」の動きで、投資ポジションは世界の隅々まで拡大してきた。
1回当たりの利上げ幅はどのぐらいなのか?
このような、いわば「すでにパンパンに膨れ上がった」状態での利上げ開始、さらに、それ以上に市場が怖がっている量的引き締めの早期開始予想である。ラグなしに、というよりもまだ利上げや量的引き締めが始まっていない段階から、米国株は不安定化し、波乱含みとならざるを得ない。
そして、1月半ば以降に米国株を下落方向でさらに不安定化させたのは、利上げの「幅」の問題が浮上したからである。
3月のFOMCで利上げが開始されるとして、利上げの回数は年内に何回まで積み重なり得るのかという問いに対しては、すでに述べた通り、条件付きで「5回」と、タカ派のウォラー理事が発言した。
年内の利上げ回数の面では、「量的緩和縮小(テーパリング)」継続中に開催された1月を除けば、最大で7回という計算になる。だが、利上げを何回か実施した時点でFOMCはバランスシートの縮小に着手するとみられており、それが決定される会合では、同時利上げは回避するという見方が多い。とすれば、年内に7回の利上げということにはならず、最大で5~6回になる。
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