最多回数への言及は、タカ派とみられているウォラーFRB理事である。同理事は1月13日、22年中の利上げは「3回がベースラインだ」とした上で、年後半までインフレ率の高い状況が続けば「4回、あるいは5回の利上げが可能になるだろう」と述べた。

 利上げを開始するタイミングについては、3月のFOMCを妥当とする発言が増えており、3月の利上げはほぼ「当確」の感が漂う。

 FOMCは年間に8回開催される。22年は1・3・5・6・7・9・11・12月の開催が予定されている。1月は現状維持の決定があったので、仮に残り7回のFOMCのうち5回で利上げとなると、頻度は非常に高いと言える。すべての利上げが0.25%ポイント幅で5回なら、フェデラル・ファンド(FF)レート誘導水準は1.25~1.5%になる。

 また、おそらく数回の利上げ後にFRBのバランスシート縮小(量的引き締め)が始まると考えられるので、米国株を中心に金融引き締めによる影響は一段と大きくなる。

利上げによる景気・物価調整は極めて難しいが……

 FOMC参加者の最近の発言をもとにこの問題でもう少し説明を加えておくと、利上げによる景気・物価の「ファインチューニング(微細な調整)」は、現実問題として極めて難しいにもかかわらず、それが可能であるかのような前提で話しているように見えるケースがあることに、筆者は大いに危うさを覚える。

 ハーカー・フィラデルフィア地区連邦準備銀行(地区連銀)総裁(今年のFOMCで、ボストン連銀総裁の次期総裁が決定するまでは代行として投票権を当面保有する)は、1月13日に明らかになった英経済紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、利上げは3月開始を想定しており年内3回を支持するとした上で、インフレ率を押し上げている供給網の問題についてはFRBには対応する手段がほとんどないものの、需要の一部を鈍化させるために行動すべきだと述べた。

 また、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁は翌14日、ソーシャルメディア上のインタビューで、供給網の制約に今後さらに数カ月は見舞われると警告した上で、金融引き締めにより需要を供給の水準に合わせ、需給のバランスを取ることを通じ、インフレ高進を抑制する必要があると主張した。

 当初の想定よりも長引いている供給制約に対してFRBは事実上無力であるものの、回復ペースが想定よりも早い需要サイドには影響力を行使することができるので、利上げなどによってこちらを押し下げて需給バランスを安定させるというわけである。

 だが、すでに述べた通り(1)利上げが金融機関などを経由して実体経済に影響を及ぼすまでにはラグがある。また(2)その一方で株価へのインパクトでは(特に、利上げがあれば量的引き締めが近づくという文脈において)即効性がある。さらに、(3)利上げの間にも制約要因が徐々に解消するなど供給サイドも変動する。

 とすれば、FRBによる思い通りのファインチューニングは困難である。結局のところ、利上げをし過ぎて景気の腰折れを招くという過去の轍(てつ)を、FRBは踏むことになる可能性が高いのではないか。

 上記で再度触れたラグの問題について、足元の経済状況や金融市場の現場感覚に添って、もう少し説明しておきたい。米国における金融引き締め(今回の場合は、利上げおよび量的引き締め)の影響としては主に、以下の3つのルートを想定することができる。

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