
年明け早々、1月5日に公表された2021年12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、金融引き締めに積極的なタカ派姿勢への彼らの急速な傾斜を、くっきり示す内容になった。
米連邦準備理事会(FRB)が課されている2つの責務に関しては、物価目標2%を超過達成しているので「物価安定」の方はすでにクリアされており、「最大雇用」の達成も急速に近づいているとした。インフレ率の押し上げではなく、その過度の上昇を抑え込むことが喫緊の課題に浮上しているというのが彼らの認識であり、量的緩和縮小(テーパリング)を急いだ上で、その終了時期と利上げ開始時期のインターバルは前回の正常化局面よりも小さくなるとした。
インフレ率は「需要水準の急速な回復」の表れ
インフレ率の急上昇についてFRBは、以前のように「供給制約」を主因と説明するのではなく、「需要水準の急速な回復」に着目している。労働市場参加率の回復度合いなどで不確実性はなお高いとしながらも、このまま景気・雇用情勢回復が続き、新型コロナウイルスのオミクロン型の感染拡大も影響して供給制約が長引いたり強まったりなどすれば、インフレ期待が上方シフトし、目標よりも高いインフレが経済に根付いてしまう恐れがある。だから需要サイドを押し下げる利上げは正当化される、というロジックである。
だが筆者の考えでは、今回の議事録に記された議論の内容からほぼ抜け落ちてしまっている重要なことが、下記のように4つもあった。これらが実は、米国の利上げが及ぼす影響をこれからじっくり見ていく上での、「陰の主役たち」ではないだろうか。
- (1)米国株への悪影響(「官製バブル」で高くなっている米国株は量的引き締めによって急落するリスクが大きく、すでに先読み的にそれが起こり始めている)
- (2)グローバルな金融市場への影響(新興国・途上国では「リスクオフ」で危機的な状況が発生することも)。
- (3)財政刺激や株高で景気が持ち上がっている部分の考慮がFRBは不足している(いわゆる「財政の崖」や、株価急落による逆資産効果は、米景気の腰折れリスクを増大させるとみられる)
- (4)利上げ実施から実体経済に効果が発現するまでのラグ(時間差)の問題(足元の高インフレに対し、効果が1年以上先に出てくる面がある利上げを今ぶつけることの時間的な関係を、彼らはどう整理しているのだろうか)
上記(2)に関連して付言すると、米国は世界最大の経済規模を誇り、世界の基軸通貨はドルである。FRBは「世界の中央銀行」としての顔も有しており、その政策運営はグローバルに大きな影響を及ぼしている。今回の議事録からはそうした視点の存在がほとんど感じられず、実に危うい。
そうした中、FOMC参加者から出てくる年内の利上げ想定回数に関する発言が、1月前半、徐々にエスカレートしていった。
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