年末恒例のにぎわいは戻ってきた様子だが……(写真:つのだよしお/アフロ)
年末恒例のにぎわいは戻ってきた様子だが……(写真:つのだよしお/アフロ)

 日本の消費関連業種に根付いている過少需要・過剰供給の「デフレ構造」を示してきた経済指標に、足元でちょっとした変化が生じている。

 日銀短観(全国企業短期経済観測調査)12月調査の調査全容が、12月14日に公表された。前日に公表された概要では分からない、業種別の細かい計数を知ることができる。

 例えば、中小企業の資金繰り判断DI(回答比率「楽である」-「苦しい」)を見ると、「宿泊・飲食サービス」「繊維」「対個人サービス」「食料品」「造船・重機、その他輸送用機械」がマイナスだった。

 過少需要・過剰供給の「デフレ構造」が日本経済に根付いていることを確認するため、筆者が昔から個人消費関連3業種(「小売り」「対個人サービス」「宿泊・飲食サービス」)についてウオッチしているのが、国内での製商品・サービス需給判断DI(回答比率「需要超過」-「供給超過」)である。今回は、日銀に有利な方向で変化が見られた。

 全規模合計の上記DIは、「小売り」がプラス2(前期比プラス10ポイント)、「対個人サービス」がマイナス34(同プラス2ポイント)、「宿泊・飲食サービス」がマイナス57(同プラス16ポイント)になり、いずれも改善した。先行き(22年3月予測)はそれぞれ、マイナス3、マイナス30、マイナス55である(図1)。

■図1:日銀短観 国内での製商品・サービス需給判断DI(回答比率「需要超過」-「供給超過」)消費関連3業種 全規模合計
■図1:日銀短観  国内での製商品・サービス需給判断DI(回答比率「需要超過」-「供給超過」)消費関連3業種  全規模合計
注:直近は21年12月調査における先行き(22年3月予測)
(出所)日銀

 「小売り」の実績であるプラス2は調査開始以来、最も高い水準である。規模別では、大企業がマイナス18(前期比プラス3ポイント)、中堅企業がマイナス3(同プラス7ポイント)、中小企業がプラス11(同プラス13ポイント)になった。企業規模が小さいほど、商品の需給がタイト化したことが分かる。

世界的な「供給制約」が影響

 こうした「小売り」における需給のタイト化は、世界的に問題になっている「供給制約」を反映したものである可能性が高い。半導体・部材不足に由来する自動車・一部白物家電・給湯器などの在庫不足や、輸入牛肉や鶏肉が足りない「ミートショック」が典型例である。海外に注文した品が船便減少など海上輸送の滞りからなかなか手元に届かない、といった話も耳にする。

 そうした供給制約は、経済にダイナミズムがある限り、時間がたてば解消されていく性質のものであることに留意されたい。また、人口減・少子高齢化の流れが変わらない以上、国内の需要は中長期的に減少していくので、黙っていても需給が緩んでいくという側面もある。

 プラス圏に浮上した「小売り」とは異なり、人口動態からの影響がより大きいと考えられる「対個人サービス」と「飲食・宿泊サービス」の上記DIは、大幅なマイナスの数字のままである。日本の「デフレ構造」にはやはり、根強いものがあると、筆者は考えている。

 このような状況下で一つ注目すべきは、消費者段階と企業取引段階の「物価上昇率格差」である。日米の比較から浮かび上がることを、以下で説明したい。

 物価指標の前年同月比が内外で急上昇しており、企業取引段階の物価指数の前年同月比が消費者段階のそれを、大幅に上回っている。

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