1日には、日銀の安達誠司審議委員が大分県金融経済懇談会での挨拶(講演)の中で、「私としては、コロナ禍を通じた企業・家計の行動変容が、人々の『物価観』を変え、それを通じて企業による賃金設定にも、賃金の上昇につながり得る変化が生じる可能性に注目しています」と述べていた。だが、筆者としては、この見方には賛同できない。

 コロナ禍の下でも消費者のスタンスの根本部分が変わっていないことは、今年のヒット商品の顔ぶれからも、その一端をうかがい知ることができる。今回のコラムの後半部分では、そのことを指摘しておきたい。

 日経MJ(流通新聞)は12月3日に、「2021年ヒット商品番付」を掲載した。筆者が毎年楽しみにしており、エコノミストの立場からも必ずチェックするコンテンツである。

22年も続きそうな「値上げ」

 今年の東の横綱は「Z世代」。MJによる説明文は、「1990年代半ば以降に生まれたデジタルネーティブ世代。環境や自分らしさを大事にする新時代の消費スタイルを先導、企業にマーケティングの変革を促している」というものである。1つ前の世代である「ミレニアル世代」とも異なる意識や行動パターンの人々であるため、各種商品・サービスの売り手側は、新たな工夫を余儀なくされているという。

 一方、西の横綱は「大谷翔平」。説明文は、「投打の二刀流で野球の常識を打ち破り、日米を沸かせた27歳の現役大リーガー。大リーグのア・リーグMVPを日本選手として20年ぶりに獲得した」である。スポーツ選手そのものが「商品」というわけではないものの、その大活躍が社会現象を巻き起こし、関連商品が売れるなどの経済効果があったということだろう。

 ちなみに「大谷翔平」は、パ・リーグMVPを獲得した2016年の「ヒット商品番付」では東の小結だった。また、米大リーグに挑戦した18年上期の番付で東の横綱になったものの、18年通年の番付にはランクインしなかったエピソードもある。

 東の大関は「東京五輪・パラリンピック」。57年ぶりに東京で開催された東京五輪は、新型コロナウイルス危機に直面してほぼ無観客での開催となり、追加的な景気刺激効果への期待感は空振りに終わった。

 西の大関は「サステナブル商品」。日本を含む世界各地で異常気象が相次ぎ、地球温暖化対策が急務として強く意識される中で、消費行動でも一定の変化が見られた。「脱プラスチック製品や古着の再利用、使い捨てにしない容器回収など様々な手法で環境に優しい消費スタイルが広がる」と、MJは説明した。

 人々の節約志向や低価格選好に訴求した商品・サービスがこの番付にどれくらい入っているのかも、筆者は注目ポイントにしている。21年の場合、「デフレ関連商品」だと明確に言えそうなのは、以下の2つだった。

◆東前頭筆頭「携帯新料金プラン」
 スマホの月額基本料金が3000円を切る割安な設定で、ある大手キャリアのプランは契約数が200万件を超えたという。

◆東前頭4枚目「ディスカウント店」
 「コロナ下の食品値上げもあり、低価格販売のスーパーやドラッグストアに注目集まる」と、MJは説明した。筆者の自宅近くでも、そうした動きが観察されている。

 20年の番付では、「デフレ関連商品」は西前頭5枚目の「『Go To』キャンペーン」のみだった。その前の19年の番付では、ある100円ショップ大手が販売するコスメと、「原価酒場」(酒類を原価で売る飲食店の増加)の2つだった。21年も、ほぼ同じ水準で推移したと言える。低価格商品の選好が強まるでも、弱まるでもなく、一定の水準で根強く続いているイメージである。

 飲食料品の値上げ発表が相次ぐ中で、22年もそうした流れが続いていく可能性が高いと、筆者はみている。

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