問題は、人々にとって食品は必需品であり、値上げされたからといって買うのをやめるわけにはいかないということである。別の統計である家計調査の用語を借りると、選択的支出ではなく、基礎的支出である。となると、その値上がりは消費者のマインドを悪化させがちになる。

将来不安が物価の上がりにくさに追い打ち

 日銀の鈴木人司審議委員は12月2日に兵庫県金融経済懇談会で挨拶(講演)した際に、日本で物価上昇により多くの時間を要するとみられる背景として、「過去のデフレの経験から物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に定着しているという事情」に加えて、個人的見解として、「人々が将来の増税や年金受給額の減額などへの不安を抱いていることや、賃金上昇への期待が高まらないことが、家計の消費意欲、ひいては値上げに対する許容度が高まっていかないことにつながっているものとみています」と説明した。後者の中核は、日本人に根強い「将来不安」だろう。

 コストが高騰した分をメーカーが販売価格にフル転嫁しようとしても、相次ぐ値上げの動きを目の当たりにした家計は、実質ベースで自らの所得が目減りしたことを踏まえて、「防衛意識」を強める可能性が高い。それは個人消費全体の勢いを弱らせるとともに、より安価なプライベートブランド(PB)品への需要シフトなどにもつながっていくだろう。過去何度も見られたことであり、今回が全く違う様相になる兆しは見えていない。

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