ばらまきっぱなしは悪?(写真:PIXTA)
ばらまきっぱなしは悪?(写真:PIXTA)

 政府は11月19日、財政支出55.7兆円程度(過去最大)・事業規模78.9兆円程度の新たな経済対策「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定した。

 その4つの柱は、①「新型コロナウイルス感染症の拡大防止」、②「『ウィズコロナ』下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え」、③「未来を切り拓(ひら)く『新しい資本主義』の起動」、④「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の推進など安全・安心の確保」である。

 国費は43.7兆円で、2021年度の一般会計補正予算案には 31.6兆円が計上される。岸田文雄首相が先の衆院選で前面に出した「数十兆円規模」の大型経済対策がこれで形になったわけだが、当初報じられていた30兆円台から55.7兆円へと、財政支出の大きさは決定過程の終盤で膨らんでいった。

 その背後には22年夏の参院選も意識しながらの、与党からの強い歳出拡大圧力があったようである。15日の自民党政務調査会全体会議では「(政府が直接支出する)真水ベースで30兆円規模が必要だ」といった大規模な財政支出を求める意見が噴出する一方、逆に財政規律を求める意見は聞かれず、財務官僚出身のある議員は「財政再建派は今や絶滅危惧種だ」とつぶやいたという(11月19日付 毎日新聞)。

与党も野党も財政出動志向に

 だが、これは決して与党だけの話ではないことを、しっかり留意する必要があるように思う。先の衆院選では、与党以上に野党が積極的な財政出動を主張し、それらの政党の選挙公約には「消費減税」「国民全員への一律現金給付」など、与党よりも一歩踏み込んだメニューが盛り込まれていた。そのような日本の政治状況を「バラマキ合戦」のようだと揶揄(やゆ)する声が、内外で聞かれていた。

 例えば立憲民主党が選挙公約に含めた「生活困窮者への現金給付や事業者支援を盛り込んだ 30兆円以上の補正予算案を直ちに編成する」は、岸田首相が今やろうとしていることと、見事に重なり合う。

 今回の経済対策には、「生活・暮らしへの支援」として「住民税非課税世帯(1世帯当たり10万円給付)や厳しい状況にある学生などお困りの方々への支援、雇用調整助成金等の特例措置延長、孤独・孤立に悩む方々への支援」や、「事業者への支援」として最大250万円の「地域・業種を限定しない事業規模に応じた給付金(事業復活支援金)」が盛り込まれた。

 また、首相は21年度補正予算案の年内可決・成立を目指すと明言しており、国会日程もそれを念頭に組まれている。今回の予算案編成は、決定された経済対策の内容を含めながら、21年度補正予算案と22年度当初予算案を一体的にとりまとめ、切れ目がないようにする「16カ月予算」となる。

 通常は補正予算案の編成が年末近くで、通常国会での可決成立が年明けになるため一体的な編成が「15カ月予算」と呼ばれるのだが、今回はスピード感を出して12月中に国会で成立させるので、1カ月増えて「16カ月予算」というわけである。

 与党も野党も積極的な財政出動を公約に掲げて衆院選を戦い、自民党が単独で絶対安定多数を確保するなど与党が勝利し、第2次岸田内閣が発足した。国民の信託を得る政治的なプロセスをしっかり踏んでいるわけであり、政府が大規模な経済対策を決定すること自体を全面否定するのは難しい。

 とはいえ、最も重要な国政選挙において、特に経済政策の面で、与野党の間で根本的な対立軸がないというのは、望ましい話とは言えない。経口治療薬の開発が進むなどコロナ禍から脱する手掛かりが得られ始めている現状で、しかも日本の政府債務残高が主要先進国の中で突出して悪い状況のもと、財政の面で大盤振る舞いを続けるのはいかがなものかと考えている有権者も少なくないだろう。

 だが、そうした人々の考えの受け皿になり得る主要な政党は見当たらない。

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