岸田文雄首相(写真:つのだよしお/アフロ)
岸田文雄首相(写真:つのだよしお/アフロ)

 自民・公明両党の幹事長は11月8日に続いて9日も会談し、岸田政権が打ち出す大型経済対策の内容の詰めで1つの焦点となった「現金給付」の具体的内容で調整を継続した。

 茂木敏充自民党幹事長からは18歳以下に一律10万円の現金給付という公明党案について、「一つの考え方だ。一方で非正規、女性、子育て世代や、学生へのより手厚い支援策が重要だ」との発言が、9日の記者会見で聞かれた。

 先の衆院選で自民党は単独で絶対安定多数を確保しており、事実上勝利したと評されている。一方、公明党は議席数を増やした上に、比例区の総得票数が目標ラインの700万票を超えた。

 両党とも「選挙に勝ったのだから公約は当然実現させたい」と話になりやすく、妥協が成立するまでにやや時間がかかったのだろう。22年夏の参院選がすでに意識され始めているであろうことも想像に難くない。

 その後、10日に開かれた自公両党の党首会談でこの問題は決着した。18歳以下の子どもへの10万円相当の給付(年内に現金5万円を先行給付し、来春までに子育て関連に使える5万円相当のクーポンを支給する)にあたっては年収960万円の所得制限を導入する。

 マイナンバーカード保有者・新規取得者には最大2万円分のポイントを付与する。また、生活に困窮している住民税非課税世帯には別途、現金10万円を支給することになった。街角やサイバー空間では今回の現金給付に関して以下のように、さまざまな意見が飛び交った。

「実際は親が使い道を決める」「ひとまとめは不合理」

  • 18歳以下の子どもにお金を渡しても、実際には親が使い道を決めることになり、ギャンブルに使ってしまうようなケースも考えられるのでは、と危惧する声。
  • 18歳以下でひとまとめにしてしまうのは不合理で、例えば鉄道・バスで大人料金を支払わされる中学生以上と、それ未満は、何らかの形で区別すべきではないかという意見。
  • 子どもにまとまったお金をもしそのまま渡してしまうと、アイドル関連のいわゆる「オタ活」やゲームソフトなどに全額使ってしまうのではないかと、懸念する声。
  • 成人年齢である18歳で線引きする結果、19歳以上の苦学生はこの制度では対象外になることへの不満の声。

 与党合意で、支給対象に所得制限をかける際には「世帯内で所得の最も高い人」の年収が960万円以上の世帯を除外することになったが、世帯単位の施策であれば世帯内の所得を合算するのが筋ではないかとの意見もあった。スピーディーに5万円を現金支給するため、児童手当制度の所得制限をそのまま用いることになったが、この児童手当制度の考え方や手法は専業主婦が多数派だった時代の遺物であり、「時代遅れで不公平だ」という批判や不満が出ている。

 結局、年度内に予備費を用いて5万円を先行支給する際は、上記の通り児童手当制度のシステムを用いるので現金のままということになったが、残る5万円に関しては使途を限定するため原則としてクーポンの形にする、という折衷案になったようである。

 だが、今回の現金・クーポン支給に景気を刺激する大きな効果があるのかと尋ねられると、ノーと答えざるを得ない。これはエコノミストの多数意見だろう。

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