岸田文雄首相(写真:ZUMA Press/amanaimages)
岸田文雄首相(写真:ZUMA Press/amanaimages)

 「中間所得層の復活あるいは拡大」を経済政策面の主要な課題に設定し、その実現を目指そうとする政治指導者の動きは、実は日本、米国、中国で共通している。

 岸田文雄首相は2021年10月4日の就任記者会見で、「新しい資本主義を実現していく車の両輪は、成長戦略と分配戦略です」とした上で、これらのうち「分配戦略」は、第1に「働く人への分配機能の強化」、第2に「中間層の拡大、そして少子化政策」とした。そして、「中間層の所得拡大に向け、国による分配機能を強化いたします」と言明した。

「米国をつくったのは中間層」

 これより前、自民党総裁選に勝利した後の9月29日の記者会見で岸田氏は、「経済には成長と分配、これが共に求められます。成長なくして分配なしです。しかしながら分配なくして次の消費、さらには需要、これも喚起されないということです。分配なくして次の成長もない。これもまた偉大な事実であると私は思っています」と述べていた。

 米国のバイデン大統領は4月28日に行った施政方針演説で、「国の背骨」と位置づける「中間層」を重視した政策運営を強調。大企業や富裕層ではなく、中間所得層や低所得層に恩恵が及ぶ経済政策や外交を進める姿勢を示し、「(米金融街の)ウォール街が米国をつくったのではない。中間層がつくったのだ」と述べた。

 また、議会に法案成立を求めた2兆3000億ドル規模のインフラ整備計画と、幼児教育の無償化を柱とする1兆8000億ドル規模の教育支援策は、いずれも「中間層を育てるため」(政権幹部)の目玉政策であるとされた(4月29日付産経新聞)。大企業が収益を増やせば労働者に恩恵が波及するという「トリクルダウン」論に関しバイデン氏は、「機能しなかった」と指摘。中間層や低所得層が収入を増やし、経済を底上げする「ボトムアップ」に転換すべき時だとした(同)。

 「トリクルダウン」は機能しなかったとバイデン大統領が喝破したことは、日本で聞かれる「アベノミクス」への批判と共通している面がある。岸田首相があえて前面に出している「分配」への傾斜は、そうした批判を意識した動きととらえることができる。

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