長時間残業のひどさが、「霞が関」不人気の大きな要因に……(写真=PIXTA)
長時間残業のひどさが、「霞が関」不人気の大きな要因に……(写真=PIXTA)

 「省庁の残業代 18%増要求 環境省47%増・厚労省34%増 長時間労働浮き彫り 来年度予算」。こういうタイトルの記事が、朝日新聞の10月8日朝刊で1面トップを飾った。

 もう30年以上前のことになるが、筆者は社会人生活のスタートで2年間だけ、霞が関の中央省庁でキャリア官僚として働いた経験がある。当時のことを思い出して感慨深かった。

 記事によると、2022年度予算案の編成に向けた概算要求で、主要な中央省庁の残業代(超過勤務手当)要求額を集計してみたところ、前年度の当初予算に計上された額より18.4%も多い約385億円になったという。

 「首相官邸が残業代を労働実態にあわせて支払うように各省庁に指示したことが背景にある」「実態にあわせた要求の急増は、いわゆる『サービス残業』が横行していた可能性を示している」と、記事の最初の方に書かれていた。

 「……可能性を示している」ではなく、「……ことが強く示唆されている」といった書きぶりの方がぴったりではないかと、すぐに思ってしまった。同じように考える人は、霞が関で働いた経験のある人の間ではかなり多いのではないか。SNSやブログなどで見かける、匿名で発信されている中央省庁の勤務実態は、「国会待機」と呼ばれる非合理的な業務負担の重さを中心に、昔とほとんど変わっていないように見える。

 筆者の昔の経験では、中央省庁のサービス残業は、いわば当たり前だった(むろん、民間企業も含めてそれが暗黙の了解になっている、古い時代だったとも言えそうなのだが)。出勤時間は民間企業に比べるとかなり遅めだが、年末にかけての繁忙期になると、毎日終電で退庁するような日々を過ごしていた。

残業時間の記録簿は「フィクション」

 そして、残業時間の記録簿は「フィクション」であり、年度の予算上で許容される上限以内に収まるよう、日々の退勤時間を調整して記録していた。その際に上司の1人から言われたことを、今でもはっきりと覚えている。

 「予算を握っている大蔵省(当時はまだ財務省に改称される前だった)は残業代が満額出るけど、他の省庁は予算がある範囲内でしか残業代は出ないんだよ」

 学生時代のアルバイトではむろん、そんなことはあり得なかった。おかしな話だと思ったものの、社会の厳しさとはそういうものなのかと、自分を納得させた瞬間でもあった。

 その頃、ある都市銀行に就職していた高校時代の1年先輩から話を聞く機会があり、勤務実態を尋ねてみた。彼が言うには「勤務先である支店のシャッターが開くより前から仕事をしておかないと回らないから、近所の喫茶店に入って早朝から仕事をするのが普通だよ。ビルの警備員さんがカギを開けてくれたらお店に入り、デスクで仕事を続けるんだ」。

続きを読む 2/3 なぜ優秀層から人気がなくなったのか

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。