
「タカ」「ハト」で色分けされることが多い中央銀行の世界に、新種の鳥が登場した。外交・安全保障の世界では、タカ派と言えば、武力行使も辞さずに強硬路線をとるよう主張する傾向のある人々。また、ハト派と言えば、外交交渉を軸にして事態を穏便に解決しようとする志向が強い人々を指している。
そして、中央銀行の世界では、景気過熱・インフレ警戒色が強く、金融緩和縮小、さらには利上げなどの金融引き締めに積極的な人々が、タカ派。逆に、景気悪化・デフレへの警戒心がより強く、金融緩和強化に積極的で金融引き締めには消極的な人々が、ハト派と呼ばれている。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)のホークスビー総裁補佐は9月21日の講演で、「不確実性が高いなかで金融政策を決める際は、タカ派・ハト派というような硬直した路線を走るのではなく、柔軟なアプローチが適切である」というメッセージを発信した。
マオリ族のことわざを引用
ある時はゆっくり小刻みに注意深く動き、他の時は自信を持って迅速かつ大幅に動くというような、状況への適応力が高いアプローチが求められるとして、その比喩では「『白サギ(white heron)』が適している」と述べた。マオリ族の文化にはこの白サギに関する2つのことわざがあり、周囲の状況に反応する特性をよく捉えているという。
政府(アーダーン政権)によるロックダウン発動を受けて、RBNZは9月に利上げ開始決定を「一時停止」した。その直後、最初の利上げが0.25%ポイント幅ではなく0.5ポイント幅になるのではという見方が市場で浮上した。だが、上記のホークスビー発言はそれを打ち消した形である。
アーダーン政権が「ゼロコロナ」戦略の断念をアナウンスした後、10月6日にRBNZは市場の予想通り、0.25ポイント幅で利上げに踏み切った。利上げは14年7月以来であり、新たな政策金利水準は0.5%である。
上記のようなケースを含め、市場には各中央銀行やその構成メンバーを、タカ派とハト派に「分類」したがる傾向がある。だが、同じ人物でも状況に応じて政策面の主張は変わり得る。あくまでその時点の状況下での、発言内容などを手掛かりにした種類分けである点は、留意しておく必要がある。
ここで、9月下旬に欧米市場で強まった、各国の中央銀行がタカ派に一段と傾斜するのではないかという観測と、それを受けた長期金利の上昇にも触れておきたい。
欧州を震源地とするインフレ警戒感の高まりが米債券市場の動揺を誘い、9月下旬に長期金利が上昇した。米国では10年債が1.56%、30年債が2.10%を記録し、ユーロ圏では独10年債が一時マイナス0.17%まで上昇。日本では10年債が0.070%をつけた。
Powered by リゾーム?