オセアニアの中銀は今も先行シグナルなのか(写真:ロイター/アフロ)
オセアニアの中銀は今も先行シグナルなのか(写真:ロイター/アフロ)

 2019年7月末、米連邦準備理事会(FRB)は利下げへの路線転換を決定し、この年の9月と10月にも追加で利下げした。米国のこの政策大転換に際して「先行指標」的な役回りを担ったのが、FRBと同様に「物価安定」と「最大雇用」という2つの法的な責務を負っているオセアニアの中央銀行2つ、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)とオーストラリア準備銀行(RBA)だった。

 RBNZは19年5月に、RBAは翌6月に利下げへ踏み切り、FRBの動きに先行した(当コラム19年5月28日配信「利下げする先進国がこれから増える? ニュージーランドは『先導役』」ご参照)。

 では、量的緩和の縮小(テーパリング)・停止、さらにはその先の利下げのタイミングを市場が材料にしている現在の局面でも、19年の時のように、RBNZやRBAはFRBの動きに対する先行シグナルになるのだろうか。

 筆者は否定的である。その最大の理由は、19年当時は認知されていなかった「新型コロナウイルス」の存在である(図1)。

■図1 :ニュージーランド、オーストラリア、米国の状況比較 ~ 新型コロナウイルス関連および失業率
■図1 :ニュージーランド、オーストラリア、米国の状況比較 ~ 新型コロナウイルス関連および失業率
注:新型コロナウイルス関連の数字は21年9月23日時点。失業率の「コロナ前」は米国の20年2月に合わせた。
(出所)Our World in Data、各国公式統計から筆者作成
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雇用情勢、米国とは大きな違い

 そうした状況下、オーストラリアのモリソン政権は、ワクチン接種率が一定の水準まで上昇するなら経済活動再開に軸足を移すと表明し、「ウィズコロナ」へと路線転換せざるを得なくなった。この間、米国では、マスク着用やワクチン接種への忌避感が共和党支持者の多い州を中心に根強いことなどから、デルタ型感染拡大による経済へのダメージが予想以上に大きくなった。

 また、雇用情勢の改善度合いでも、失業率が「コロナ前」よりも低い水準となっているオセアニアの2カ国と、米国との間では、大きな違いがある。

 ニュージーランドのRBNZは7月14日、資産買い入れを同月23日から停止すると発表した。利上げ観測が市場で支配的だった8月18日には、政策金利(オフィシャルキャッシュレート)を0.25%で据え置いた。

 これは、政府が同じ日に新型コロナウイルスへの対応でロックダウンを実施したため「コミュニケーションが困難になった」、要するに、同じ日になぜ金融引き締めをするのかの説明が難しくなったことが理由である。

続きを読む 2/3 テーパリング、足元では見送り

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