2%の物価目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」という共同声明の文言は、その後の状況に鑑みると、なんとも空疎に響く。政府が「持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」というくだりは、現実の状況とかみ合っていない。

 日本経済新聞が掲載した上記の政治コラムでは、「実は1年前の首相交代時に財務省と日銀で有名無実化した共同声明の改定論が浮上していた」が、最終的に菅首相が「このままでいい」と決断した、というエピソードが紹介されていた。

 また、それより前にも、16年夏に共同声明の見直し論が浮上していたことを、ジャーナリスト軽部謙介氏の著書「ドキュメント 強権の経済政策――官僚たちのアベノミクス2」(岩波新書)が伝えていた。

 やはり円高リスクを招かない範囲にとどまるとみられるが、実現するかどうかはともかく、次の内閣で政府・日銀共同声明の文言見直しがいずれ検討課題になる可能性は小さくないと、筆者はみている。そうした動きがあることが伝わってくれば、市場でさまざまな思惑が生じ、材料になるだろう。

 総裁選の候補者からは、金融政策関連の発言も出てきている。河野氏は9月10日の出馬表明記者会見で、政府と日銀が共有する物価目標2%について、「インフレ率は経済成長の結果から来るものだ。達成できるかというとかなり厳しいものがあるのではないか」とコメント。

どの候補でも異次元緩和は続行か

 消費者物価は景気サイクルの遅行指標だという基本を踏まえた発言を行いつつも、金融政策については「日銀も市場と対話することが大事だ」「日銀にある程度お任せしないといけない」と述べるにとどめた。

 また、15日には金融政策について「新型コロナウイルス禍だから緩和的なものを続けざるを得ない」と発言。16日には政府・日銀共同声明の関連で、「コロナ禍で金融政策を急に変えるわけにはいかない」と述べた。

 岸田氏は異次元緩和について「当面は触るわけにはいきません。外すことは変なメッセージを与えかねません。コロナから命を守るために、大規模な金融緩和と財政出動で経済を支えていきます」とインタビューで述べた(「週刊ダイヤモンド」9月18日号)。

 高市氏は「サナエノミクス」と名付けた「アベノミクス」の強化版を経済政策の看板に据えている。物価目標2%達成に強くコミットする立場であり、それまでは財政健全化目標のフリーズを辞さない構えである。米国にならって日銀の責務に「最大雇用」を加えることも主張しているようである。

 野田氏は、総務相在任中の18年4月のインタビューで、「これ以上、異次元緩和は不要」であり物価目標2%は撤回すべきだとの考えを表明していた。

 どの候補が勝利する場合でも、少なくともコロナ危機が続く間は、あるいは2つの国政選挙を終えるまでは、異次元緩和を日銀が続行することに同意するだろう。円高のリスクを自ら膨らませるような、金融政策を巡るドラスチックな動きは予想し難い。だが、日銀人事や共同声明見直し問題などを通じて、何らかの変化は将来、十分起こり得る。

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