日銀の黒田東彦総裁(写真:ロイター/アフロ)
日銀の黒田東彦総裁(写真:ロイター/アフロ)

 日銀の中村豊明審議委員は8月25日の記者会見で、デルタ株感染拡大でも景気の底割れはないという見通しを示した上で、今後の個人消費の関連で次のように述べた(日銀HPから引用)。「マグマがだんだんたまっている」という言い回しが、筆者には印象的だった。

 「景気の下振れには注意をしなければいけないと思いますが、今のところ、底が割れるようなことにはならないのではないかと思っています。(中略)私は、下振れリスクは、ペントアップ(先送り)需要がどのくらい後ずれするのかということと、ペントアップの需要がどれほどあるのかということかと思います」

 「わが国でも、家計の現預金は、この3月期で従来の増加トレンドよりも約37兆円増えていました。ですから、わが国もペントアップ需要が出る環境になればと思っています。圧迫されていた、抑圧されていた欲望といいますか、使いたい、自分の欲求を満たしたいというマグマがだんだんたまっているということもありますので、そのタイミングの問題だと思います」

 「本当は夏休みが一番のタイミングだったと思うのですが、それが年末の長期の休暇のようなところ、もしくはその先の春休みか、そういうところに後ずれするかなという気がします」

サービス消費のペントアップ需要に注目

 上記の記者会見に先立つ、オンラインの宮崎県金融経済懇談会における挨拶(講演)の中で中村審議委員は、個人的に特に注目している3つのポイントの最初に「サービス消費のペントアップ需要」を挙げた。

 その上で同審議委員は、米国の事例を引き合いに出しつつ、「日本でも、家計の現預金残高(本年3月末時点)は、過去最高の1056兆円に達し、トレンド対比プラス37兆円増加していますので、ワクチン接種や医療体制強化の進展などにより感染症の影響が和らいでいけば、失われた消費機会を取り戻すべく平時よりも消費支出が増加することでペントアップ需要が顕在化し、経済活動が活発化することが期待されます」と述べていた。

 こうした中村審議委員による基本強気の景気見通しとはやや異なる認識を示したとみられるのが、9月1日に行われた若田部昌澄日銀副総裁による挨拶(講演)・記者会見である。

 若田部副総裁はオンラインで参加した広島県金融経済懇談会における挨拶(講演)の中で、次のように述べた(日銀HPから引用)。

 「感染症の拡大以降、家計部門では、外出の制限などから本来の消費機会が失われたことや将来の不確実性により貯蓄が増加する中で、経済対策による給付金の支給も加わり、手元資金が大きく積み上がっています。先行きは、感染症の制約が和らぎ不確実性も低下していくもとで、これまで抑制されてきた対面型サービスを中心にペントアップ需要が顕在化し、個人消費も回復すると予想しています」

 「人々は感染症下で長らく外食や旅行を制限されてきた訳ですから、その反動であるペントアップ需要も、相応の規模に達することが期待されます。その過程では、家計部門に積み上がった待機資金の存在も下支え要因になると考えられます」

続きを読む 2/4 追加緩和への言及も……

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