2021年6月18日、金融政策決定会合を終え記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁(写真:共同通信)
2021年6月18日、金融政策決定会合を終え記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁(写真:共同通信)

 日銀は6月17、18日に開催した政策委員会・金融政策決定会合終了後の対外公表文「当面の金融政策運営について」に、何の前触れもなく突然、第6番として以下のような文章を盛り込んだ。

 「気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうる。日本銀行としては、中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは、長い目でみたマクロ経済の安定に資するものと考えている」

 「その際、金融政策面での対応に当たっては、市場中立性に配慮しながら行うことが重要である」

 「こうした観点から、日本銀行は、気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入することが適当と判断した。この新たな仕組みは、成長基盤強化支援資金供給制度の後継と位置付けるが(同制度の新規貸付は現在の期限である2022年6月をもって終了)、同制度の終了を待たずに、年内を目途に実施する。なお、その骨子素案を、7月の金融政策決定会合で公表する予定である」

唐突に発表された「気候変動オペ」

 会合が通常よりも長引いてなかなか終わらず、「何か出てくるな」と市場は身構えたが、答えは気候変動(地球温暖化)問題への、日銀としての対応開始宣言だった。

 この「気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するための新たな資金供給の仕組み」、いわゆる「気候変動オペ」の骨子素案が予告通り、7月の金融政策決定会合終了後に公表された。

 それまでの間、市場では骨子素案に含まれる内容について予想が分かれた。具体的には、日銀が気候変動オペで民間金融機関にバックファイナンスする際に付利をするかどうか(民間金融機関の積極対応を促すインセンティブとして日銀が金利を支払うのかどうか)が、主要な論点になった。

 筆者は、現在の成長基盤強化支援資金供給制度と同様に、ゼロ金利での融資となり、付利はないと予想した。そうした予想の最大の根拠になったのが、先に引用した6月18日の対外公表文が、「金融政策面での対応に当たっては、市場中立性に配慮しながら行うことが重要」だと強調していたことである。

 日銀が気候変動対応を行う際の基本となる方針を3つに整理すると、以下のようになる。

(1)気候変動問題は、短期的にではなく中長期的に、きわめて重要な案件である。
(2)金融政策の面から民間の気候変動対応を支援することは「長い目でみたマクロ経済の安定に資する」ことである(日本銀行法第2条に書かれている「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という理念と整合性がとれた行動である)。
(3)上記の支援の際には、「市場中立性への配慮」が重要である。

 これらの点は実際に、気候変動オペの骨子素案を決定した後に開催された日銀政策委員会・通常会合で決定された文書「気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について」の中に、しっかり書き込まれた。

続きを読む 2/4 気候変動オペ、小さく生んで大きく育てる?

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