米国ではデルタ型の症例が増加している(写真:USA TODAY Network/アフロ)
米国ではデルタ型の症例が増加している(写真:USA TODAY Network/アフロ)

 インド型(デルタ型)変異ウイルスなど新型コロナウイルスの脅威が、一層大きくなっている。感染再拡大による世界経済の減速を警戒して、金融市場では7月中旬、株安と長期金利の低下が進んだ。中南米ではペルーを起源とするラムダ型の感染が拡大しているという。

 英国や米国では、「集団免疫」達成とされる水準には届いていないにせよ、ワクチン接種率がある程度まで上昇しており、発症・重症化のリスクを相応に抑制できているように見える。つまり、死亡者数や入院患者数は前回の感染拡大の「波」の時よりも少なくなっている。ただし、新型コロナウイルスへの感染リスク自体は防ぎ切れずに、新規感染者数の増加が足元で加速している。このことをどう考えるべきか。

英国は「共生」を意識

 英政府は7月19日、イングランドのロックダウン(都市封鎖)を予定通りに全面解除した。その2週間前にジョンソン首相は、「ウイルスとの共生を学び始めると同時に、コロナのリスクを慎重に管理しなければならない」と述べていた。コロナのリスクを世の中から完全に消し去るのは断念し、これまで共生してきているインフルエンザのような形に持っていくつもりのようである。ウイルス感染防止に向けたリスク管理は、企業や個人の自主性・責任に委ねる姿勢でもある。

 一方、米国のバイデン大統領は7月4日、米国民が「死のウイルスからの独立を宣言することにかつてないほど近づいた」と述べた。独立記念日の演説であるがゆえに、上記のレトリックを用いたのだろうが、表面的には英政府と異なるスタンスである。

 ここで見落としてならない重要なことは、(1)ワクチン接種で体内にできた抗体は半年程度で消えてしまう恐れがあること、(2)今後生じてくる変異ウイルスに対しても現在のワクチン接種で発症や重症化のリスクを封じ込められるとは限らないこと、以上2点である。

 上記(1)に対処すべく、英政府の委員会は6月30日、臨床試験のデータも見ながら、9月にも高齢者や医療従事者らを対象に3回目の接種を始める準備をすべきだと政府に助言した。何も手を打たずにいると、北半球の冬場という、今後到来する感染リスクが増大しやすい時期に、対ウイルスの「防御シールド」が弱くなってしまう。

 7月5日には、米独医薬品メーカー製ワクチンの予防効果が低下しているとしたイスラエル保健省の報告書が注目された。入院・重症化予防には93%の効果があるものの、このウイルスへの感染・発症に対する予防効果は64%で、5月に報告された95%超から低下した。「デルタ型」感染拡大と制限措置の緩和が原因だという。

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