もともと人手不足の業界では、省力化が進む(写真:PIXTA)
もともと人手不足の業界では、省力化が進む(写真:PIXTA)

 正式名称「全国企業短期経済観測調査」、いわゆる日銀短観の6月調査の概要が7月1日に公表された(回答期間:5月27日~6月30日)。企業のセンチメント、売り上げ・収益・設備投資計画、為替相場の想定、物価の見通しなど、日本の企業がいまどうなっているのかを包括的に知ることのできる重要な経済指標であり、海外のエコノミストや市場参加者にもそのまま「TANKAN」で通じる。

 以前はこの統計の最新の調査結果が新聞各紙の1面トップを飾るのが当たり前だったが、近年そうではなくなった。「レジームチェンジ」以降の日銀の金融政策が物価目標の達成に事実上「特化」したため日銀短観の重みが薄れたこと、日本経済が低成長時代入りしていること、経済成長重視の雰囲気が以前よりも薄れて世の中の関心事が多様化してきたことなどが、その背景として考えられる。

 今回の日銀短観で、企業のセンチメントの良しあしをうかがい知ることのできる指標である業況判断指数DI(回答比率「良い」-「悪い」で算出)は、大企業の製造業と非製造業がいずれも3四半期連続で上昇した。製造業はプラス14、非製造業はプラス1であり、後者は5四半期ぶりのプラス圏浮上である。

 だが、両者の乖離(かいり)幅は、前回3月調査時点では6ポイントだったが、今回は13ポイントと倍以上に拡大した。「2スピード」の回復状況と言える。

「K字型」の景気回復をどう見るか

 また、製造業ではDIがマイナスになったのは2業種のみだったが、非製造業では12業種のうち4業種がマイナスだった。大企業・非製造業というのはさまざまな業種を含んでいるカテゴリーであり、コロナ禍で追い風を受けている業種と強い逆風に見舞われている業種が混在している。

 今回の調査では、DIの水準が最も高い「通信」(プラス31)と、最も低い「宿泊・飲食サービス」(マイナス74)の差は100ポイントを超えた。購買行動や企業活動のオンライン化が進展する一方で、対面型のサービスは引き続き苦境に立たされている。

 こうした業種間でばらつきが大きく一様ではない景気回復の状況は、「K字型」と呼ばれている。日本のメディアがこの表現を用いる機会も増加した。アルファベットのK字の右半分のように、動き方が大きく分岐しているという含意である。

 この点については昨年11月に行われた米大統領選の前からバイデン氏などが言及しており、筆者もこのコラムでいち早く取り上げていた(当コラム20年11月10日配信「景気回復は『W字型』『√[ルート]型』それとも『K字型』?」ご参照)。

 新型コロナウイルスがもたらした新しいタイプの危機に直面して、各企業の経営者はベストの道筋を懸命に探っている。この危機がいつまで続くのかという点よりも、危機が収束した後にどのような経済社会の姿になっていくのかということに関する推理力や、そこではどのようなビジネスが収益を生み出すのかを従来の発想を乗り越えて考え出す発想力が問われていると言えそうである。

 当面の経済をどうこうという問題よりも次元が一段高い「地球温暖化対策」というテーマが、そこにさらに加わってくる。米国がバイデン政権になり、温暖化ガス排出量削減に向けた動きがグローバルに加速しつつある中、企業は待ったなしの対応を迫られている。

続きを読む 2/3 注目すべき指標あれこれ

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