すでに「鬱憤晴らし」は始まっているが……(写真:PIXTA)
すでに「鬱憤晴らし」は始まっているが……(写真:PIXTA)

 日銀から6月23日に、金融政策決定会合(4月26、27日開催分)の議事要旨が公表された。「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の内容を政策委員たちが議論した会合であり、日本の景気見通しで意見がそれなりに分かれた部分があったことも明らかになった。

 筆者がエコノミストとして最も興味をそそられたのは、個人消費を動かす材料としての「ペントアップ需要」をどうみるかについての議論である。

 ここで説明しておくと、「ペントアップ需要(pent-up demand)」とは、何らかの理由から現実の消費支出にはならずに、水面下で蓄積されている家計の購買需要のことである。カタカナでそのまま「ペントアップ・デマンド」ということも多い。オンラインの英和辞典をひいてみると「未充足需要」「累積需要」「繰り延べ需要」といった訳語が並んでおり、イメージがつかみやすいようにも思う。

 上記の「何らかの理由」にはいろいろある。今回のように、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、内外の政府が出入国規制強化に動くなどしたため物理的に大好きな海外旅行に行けなかったり、飲酒を含む外食の機会が店舗の営業自粛などから大幅に減少したり、地方にある実家への帰省を自粛したりするケースがある。

 そのほかにも、自動車や家電製品のような耐久財をそろそろ買い替えようと考えているものの、コロナ禍で会社の業績が悪化して給料が減っているため当分我慢しようとしているケースや、半導体不足が影響して買いたい車種の在庫が販売店にないことから仮予約だけ入れておき、供給制約が解消して晴れて購入契約を結べる日が来るのをじっと待っているケースなども考えられる。

政策委員3人が個人消費の先行きに強気の見方

 今回の日銀金融政策決定会合議事要旨のうち、「ペントアップ需要」に関連する部分は、以下の通りである。

「一人の委員は、ワクチン普及後に感染症がある程度収束すれば、これまで抑制されてきた消費需要の顕在化等が、日本経済の持続的な回復につながる可能性があるとの見方を示した」
「ある委員は、米国などの状況をみると、思ったよりも早い(原文ママ)ペースで強制貯蓄の取り崩しが進む可能性があると述べた」
「また、別の委員は、家計の現・預金残高は、この1年間で約50兆円増加しており、感染症の影響が収束すれば、サービス消費でも大きなペントアップ需要が生じるとみられるとの見方を示した」
「この間、一人の委員は、自発的な貯蓄が長期化する可能性には留意が必要であると述べた」

 解説すると、「ペントアップ需要」の発現、およびそれと裏表の関係にある新型コロナウイルス感染拡大をうけて積み上がった貯蓄の取り崩しに多大な期待をかけつつ、個人消費の先行きに強気の見方を示した政策委員が3人いた。

 これに対し、慎重な言い回しながらも、コロナ禍で積み上がった貯蓄が消費支出に回される度合いが長期にわたり抑制される可能性があることに注意を喚起した慎重派の政策委員が1人いた。

続きを読む 2/3 鬱憤晴らしはすでに終わった

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。