では、仮想通貨の先物がいくつか米国で上場されており、機関投資家の一部が投資対象として仮想通貨に関心を抱いているとされる中で、今回のように相場が急落した場合、金融システムへの影響をどのようにみておくべきだろうか。
この点については、同じ19日に欧州中央銀行(ECB)が公表した金融安定報告(Financial Stability Review)の中に、記述があった。仮想通貨の現在の状況を包括的に捉えているので、その部分をご紹介したい(和訳は筆者、以下同じ)。
「熱狂の兆候は、暗号資産への関心が再燃していることでも示されているが、金融安定にまつわるリスクは限定的とみられる。ビットコイン価格の高騰は、1600年代の『チューリップバブル』や1700年代の『南海泡沫(ほうまつ)事件』のような、過去の金融バブルを上回った」
「途方もない二酸化炭素排出量と非合法性に懸念」
「これは個人投資家によりもたらされた面が大きいものの、いくつかの機関投資家や非金融事業会社もまた、以前よりも大きな関心を示している。その価格のボラティリティー(変動率)がビットコインを、リスクが高く投機的なものとしている。一方、途方もない二酸化炭素排出量や非合法の目的に使われる可能性は、懸念する根拠になる」
「暗号資産は、支払いにはまだ広範には使われてはおらず、ユーロ圏の大規模法人は暗号資産に連動する金融商品のエクスポージャーがほとんどない。したがって、金融安定へのリスクは現時点では限定的とみられる」
5月19日には米国の当局者からも、ビットコイン急落の関連で発言が複数あった。
ブラード・セントルイス連邦準備銀行(連銀)総裁は、「仮想通貨のボラティリティーがきわめて高いことは誰もが承知している」とし、現時点では金融システムに対する広範なリスクにはならないと述べた。また、ボスティック・アトランタ連銀総裁も同様の見解を表明。「現在はボラティリティーが高いが規模は大きくなく、システミックな影響が及ぶ状態にはない」とした。
さらに、翌20日にはカナダ銀行(中央銀行)が、金融システムレビュー(Financial System Review)を公表した。仮想通貨については以下の記述があった。
「昨年にかけて、暗号資産のETF(上場投資信託)が登場し、こうした証券がビットコイン、イーサリアム、その他の暗号資産に直接手を染めないで済む手立てを投資家に提供した。しかしながら、このような投資がメディアから大いに注目される一方で、金融市場全体の規模と比べた場合の足跡はごく小さなものにとどまった」
「さらに、投機的な需要に由来する価格のボラティリティーの大きさが、支払い手段として暗号資産が広く受け入れられていくうえでの大きな障害に、依然としてなっている」
「大規模法人が暗号資産に対して抱く関心は広がりつつあるものの、内在する価値を見極めるのが困難であることから、それらは引き続きハイリスクだと見なされている」
機関投資家向けセミナーなどの場で、ビットコインを含む仮想通貨全般についての見解をたずねられることが、しばしばある。
Powered by リゾーム?