豪紙オーストラリアンが報じたニューズポールの世論調査によると、過去最大に膨らんだ政府債務の削減よりも、経済活性化に向けた大型財政支出が重要だと受け止めている人が、6割に上った。モリソン政権が同月11日に公表した来年度の予算案では、政府の純債務が20年代半ばに1兆豪ドルに接近するとの見通しが示された。

 だが、この世論調査では、政府が支出を抑制して債務を削減すべきだとの意見は30%にとどまり、将来の債務負担が拡大してでも経済を刺激するのが適切と考える人の半分の水準だった。

 オーストラリアといえば、00年代に財政収支が黒字の年が続いて国債発行の必要性が薄れたものの、債券市場を維持するために一定額の国債発行を続けたエピソードがある国である。国債の格付けは今なお最上級であり、財政運営の「優等生」とみられている。だが、金融危機、さらにはコロナ危機を経て、同国の財政収支は赤字基調に変わった。

 国際通貨基金(IMF)が4月に公表した最新の世界経済見通しのデータベースから、オーストラリアの財政収支および政府債務残高の国内総生産(GDP)比の推移を作図してみた(図1、図2)。財政収支の赤字幅は改善に向かうものの、IMFの推計では26年になっても赤字は消えない。一般政府債務残高のGDP比は23年に78.0%まで上昇した後、低下基調に転じはするが、改善幅は小さく、「コロナ前」の水準には戻らない。

■図1:一般政府財政収支対GDP比 オーストラリア(20年以降は推計)
■図1:一般政府財政収支対GDP比 オーストラリア(20年以降は推計)
(出所)国際通貨基金(IMF)
[画像のクリックで拡大表示]
■図2:一般政府債務残高対GDP比 オーストラリア(20年以降は推計)
■図2:一般政府債務残高対GDP比 オーストラリア(20年以降は推計)
(出所)国際通貨基金(IMF)
[画像のクリックで拡大表示]

 オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は、最大雇用を実現しつつ物価目標をしっかり達成するため、金融緩和を粘り強く続けていく方針である。5月の理事会では政策金利であるキャッシュレートと、3年債利回りの誘導目標を、いずれも0.1%に据え置いた(5会合連続)。 

発言と裏腹、考えづらいECBの「引き締め」

 国債などの資産買い入れについては、7月の理事会で延長などを検討する方針である。こうした強固な金融緩和姿勢が市場金利を低水準に抑え込んでおり、日本ほどではないにせよ、財政規律の緩みにつながっているといえるだろう。

 課されている責務の達成に向けて中央銀行が強力な金融緩和を続けることが、財政規律の緩みにつながり、政府債務残高が積み上がる。すると、財政を安定的に運営するためには、低水準の金利水準の維持が望ましいという話になり、いわば「人質」をとられた形になって、この面から中央銀行の金融政策運営は自由度が低下する。財政への従属といわれるパターンである。

 欧州中央銀行(ECB)の理事会メンバーでもあるワイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、4月30日に独紙ベルリナー・ツァイトゥングが内容を公表したインタビューの中で、「われわれセントラルバンカーは、物価見通しに基づき必要と判断すれば金融政策を引き締めるとはっきり言わなければならない」と言明。「政府の資金調達コストが上昇するかどうかは関係ない」と言い切った。これは理念的には正しい主張である。

 だが、この発言に沿ってECBが将来、政府との関係悪化・金融市場や景気の急激な悪化を勘案せずに金融引き締めを強行できるとは、筆者には思えない。いまのECB内で、ドイツやオランダといった「北」のタカ派的な中銀総裁の影響力は弱い。

 多数決で容易に押し切られてしまう程度の勢力である。生粋のセントラルバンカーではなく政府出身であるラガルド総裁(フランス人)やデギンドス副総裁(スペイン人)は、より現実主義的な政策運営を志向する可能性が高い。

次ページ 迫力を欠く自民党の提言案