オーストラリアのスコット・モリソン首相(写真:AAP/アフロ)

 このコラムでも何度か述べてきたように、日銀が続けている異次元緩和によって「悪い金利上昇」が債券市場で発生するリスクが封じ込められているため、日本の財政規律はどんどん緩んできているというのが筆者の見解である。

 10月までに衆院選が実施されるという政治スケジュールもあって、与党も野党も財政出動に積極的な姿勢をとっている。これはコロナ禍が始まる前からの話であり、野党だけでなく与党内にも消費減税の主張がある。日本には財政規律の重要性を訴えている主要政党は存在しないといえる。

 利払いに充てる国債費などを除いた歳出から、国債発行によらない歳入(税収+税外収入)を差し引いた金額である、国と地方の「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」を2025年度までに黒字化する財政健全化目標を、政府は掲げてきている。

 6月に閣議決定される「骨太の方針」(経済財政運営の基本方針)でこの目標年次が先送りされることはなさそうだと、大型連休前後にマスコミが報じた。けれども、コロナ禍で財政赤字が膨張したこともあって、この目標の25年度までの達成は絶望的な情勢である。

 識者の一部には、東日本大震災のケースのように特別会計を作った上で、新型コロナウイルスに関連して出来上がった大幅な赤字を穴埋めするための増税(いわば「復興増税のコロナ版」)を真剣に検討すべきだとする意見もある。だが、総選挙を控えていることからすれば、政治課題として近々この話が浮上する可能性は皆無に近い。

高まる積極的な財政出動論

 足元では逆に、一層積極的な財政出動を求める声が与党内で出ている。

 自民党の岸田派が5月13日に開いた会合では、出席議員から21年度補正予算案編成を求める声が上がり、「選挙のことを考えても編成すべきではないか」という意見が出た。

 自民党の財政再建推進本部は5月18日、歳出改革などの在り方に関する提言案を議論した。財政健全化目標堅持を掲げたこの提言案は、財政・社会保障の持続可能性について、国民の信認を得ないと「消費の抑制による経済の下押しという形でコストを生じさせかねない」などと指摘。欧米での税制見直しなどによる財源確保の動きに触れ、「議論が必要であれば、聖域を設けることなく早い段階から丁寧に議論を行うべきだ」とした。

 だが時事通信によると、出席した議員から新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響を踏まえた積極的な財政出動を求める意見が続出。議論は紛糾し、提言の取りまとめはいったん先送りされた。

 同じ5月18日には南半球のオーストラリアから、この国でも財政規律が緩んできたことを示すニュースが入ってきた。

続きを読む 2/3 発言と裏腹、考えづらいECBの「引き締め」

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