だが、検査能力における中国との規模感の違いは明白である。厚生労働省は5月14日、PCR検査能力を44万8000件へと現状の2倍以上に増やす計画を発表したが、それが実現した場合でも、中国の検査能力との差はあまりにも大きい。

 また、上記②についても、私権を緊急時に大きく制限できる法的な根拠がない日本では、中国と同じ手法を当局が展開することはできない。1度目の緊急事態宣言が発令される際、外出を自粛していない人に対して警察官職務執行法に基づいて警官が職務質問をしてけん制する案が一時浮上したものの、実施されることはなかった。憲法改正で緊急事態における私権制限の間口を大きく広げようとする動きもあるが、政治的なハードルは高い。

 中国ではコロナワクチンの接種がなかなか進まないが、その理由は、自国製のワクチンへの信頼感の問題よりも、ウイルスが封じ込められているので接種を受ける必要性を感じないことや、海外旅行ができないからワクチンを接種する意欲が高まらないことのようである。 

 そんな中、中国国家衛生健康委員会の発表によると、5月14日に中国本土で12人の新型コロナウイルス新規感染者が確認された。市中での新規感染の報告は4月20日以来、約3週間ぶりのことである。だが、中国の人々の間で動揺は全く感じられないと聞く。

 一方、台湾では、新型コロナウイルス感染状況がにわかに悪化しつつあり、緊張感が高まっている。国際線のパイロットが持ち帰った英国型の変異ウイルスによる感染拡大がきっかけだが、その後、感染経路が不明な市中感染が確認されている。

防疫警戒水準を高めた台湾

 危機感を強めた台湾当局は5月11日、大規模集会の中止などを含む「第2級(レベル2)」へと防疫警戒水準を引き上げた。さらに、15日には台北市と近郊の新北市を対象に警戒水準を4段階で上から2番目の「第3級(レベル3)」とし、19日には適用対象を全土に拡大した。屋内で5人以上、屋外で10人以上の集会が禁止されている。

 また、お店に入る際にはスマホでQRコードを読み取った上で名前と電話番号を登録する(あるいは紙に書き入れて申告する)必要があるが、これについてはIT担当大臣として有名なオードリー・タン氏が中心となって迅速に作り上げたショートメッセージによる登録システムが利用可能である。もっとも、必要なワクチンの調達面で台湾の当局はかなり後手に回っており、接種率もきわめて低いなど、状況が日本と似ている面もある。

 新型コロナウイルス対策では、ワクチンの接種を進めることによる「集団免疫」の達成がやはり最も重要なのか。それとも、ワクチン接種がたとえ不十分でも「徹底検査」による感染者のあぶり出しと隔離が有効なのか。

 出てくる答えは国際情勢、さらには各国の国内政治にも、中長期的に微妙に影響を及ぼしてくるのではないか。

この記事はシリーズ「上野泰也のエコノミック・ソナー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。