新型コロナウイルスがもたらしている従来なかったタイプの危機に関し、筆者は一貫して慎重な見方をとっており、安易な楽観論からは距離を置いている。変異ウイルスが大きなリスクファクターである点については、早い段階で注意喚起をした。米国のように多くの人口を有しており、しかも国論の分裂度合いが大きく面積も広大な国では、ワクチン接種率の上昇にはおのずと限界があり、集団免疫への到達はハードルが高い。
ただし広大な大陸国家でワクチン接種率が低いにもかかわらず、筆者の予想を超えてこのウイルスの封じ込めに成功してきた国が1つある。中国である。
若干繰り返しになるが、中国のウイルス封じ込め策の基本は、①「大規模で徹底した複数回のPCR検査」の実施による無症状も含めた陽性者(感染者)のあぶり出し、そして、②感染拡大の恐れがあるとみなされた地区における「徹底的な封鎖・住民の隔離」である。
上記①について、どの程度の規模で実施したのかを調べてみると、「約2日で1000万人」という驚異的な数字である。今年1月に河北省石家荘市がロックダウン(都市封鎖)の対象になった際、中国当局は1025万人の市民全員を対象にPCR検査を2回実施。1月9日に1巡目の検査を終えた後、3日後の12日には2巡目を開始し、2日間程度で終えるとされた。
PCR検査の対応能力で突出する中国
1日当たり500万件以上のペースである。さらに、河北省のほかの大都市でもロックダウンが実施されて全市民のPCR検査が展開されたと、共同通信が伝えた。
これとは別に、新型コロナウイルス危機が始まった都市である湖北省武漢市のPCR検査能力に関する情報が出てきている。昨年12月19日の記者会見で同市の衛生健康委員会が説明したところによると、同市内の1日当たりのPCR検査能力は通常態勢で35万件分だが、緊急時には150万件分以上まで拡大できると、時事通信が報じた。
一方、日本の1日当たりのPCR検査能力は約20万件にとどまっている。全国でこの数字である。
筆者は先日、東京駅の地下で政府(内閣官房)と東京都が共同で実施したPCR検査キットの無料モニタリングに応募し、唾液を用いた検査を初めて経験した。郵便局から検体を発送した翌日の午後にはスマートフォン上のアプリに検査結果が表示されるというスピード感ある流れであり、これはコロナ対応で強力な武器になると考えた。
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