中国でもワクチン接種が進む(写真:AP/アフロ)

 ウェブサイト“Our World in Data”で、新型コロナウイルスワクチンの接種率が高い国・地域を調べてみた。日本時間5月19日午後6時30分時点で表示されているデータで、接種を少なくとも1回受けた人の比率が50%を超えているのは、以下の表にある17の国・地域である(図1)。

■図1:新型コロナウイルスワクチンの接種を少なくとも1回受けた人の比率が50%を超えた国・地域
注:国や地域名のアルファベット表記の順に表示
(出所)ウェブサイト"Our World in Data”より筆者作成

 ワクチン接種を受けた人の比率が世界で最も高く、統計数値の上ではすでに全人口の接種が完了したことになっているのが、イベリア半島の南端にある英領ジブラルタルである。筆者も観光で訪れたことがあるのだが、「ザ・ロック」と呼ばれる独特の形をした有名な岩山のふもとに繁華街がある。スペインのアルヘシラスからバスが出ており、スペイン人労働者に加えてフリーの観光客も利用している。

 100%を超えているジブラルタルの接種率の数字はおそらく、そうした人々の一部への接種もカウントした結果なのだろう。集団免疫の条件とされるワクチン接種率75~80%を余裕で達成しており、マスクの着用がいらない元の生活を取り戻したジブラルタルの人々の様子は、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が4月29日の紙面で伝えていた。

セーシェルでは感染状況が悪化

 この表にはほかに、ワクチン接種の進捗率が高いことで知られているイスラエルと英国、面積の小さな国(欧州ではマルタとサンマリノ、アフリカ東岸のセーシェル、中東ではUAE、アジアではブータンとモルディブ)、モンゴル、英領の島々、西インド諸島にありオランダを構成する自治領であるアルバが入っている。

 なお、南太平洋に浮かぶ島国であるナウルの政府観光局が5月13日、18歳以上の全国民と在住する外国人への新型コロナウイルスワクチンの1回目接種を終えたことをSNSで明らかにしたと、毎日新聞が報じた。だが、上記のデータベースで見る限り、ナウルでワクチン接種を少なくとも1回受けた人の比率は4月30日時点で27.69%にとどまっている。

 当たり前のことだが、小さな国・地域ならば住民に接種するため調達が必要なワクチンの量が少なくて済む。島しょ国・地域であれば、海で隔絶されている分、変異ウイルスを含むウイルスの侵入を防ぎやすいという利点もある。

 とはいえ、島しょ国であるセーシェルでは、感染状況がこのところ悪化している。同国の国民が接種したワクチンのかなりの部分が中国製であることと絡めて、米ブルームバーグ通信が日本時間5月11日に記事を配信したほか、WSJも同じ日の紙面でセーシェルの現状を取り上げていた。

 また、モルディブは距離が近いインドで変異ウイルスが猛威を振るっている影響を受けており、ブータンも無傷というわけではないようである(5月7日付 日本経済新聞)。

 結局、新型コロナウイルスがもたらしている今回の危機では、たとえワクチン接種がある程度進んだとしても、集団免疫が十分達成されていない限り、油断は禁物である。

 この間、ワクチン接種率はまだ低いものの、新型コロナウイルスの封じ込めでは「優等生」だと評されてきた東アジアの国・地域の代表例が、中国と台湾である。中国は「大規模なPCR検査」+「徹底的な封鎖・隔離」により、ウイルスを封じ込めてきた。一方、台湾は海で隔離されているという利点を活かしつつ、早め早めの対処により感染者数を低水準にとどめてきた。

続きを読む 2/3 PCR検査の対応能力で突出する中国

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