ウェブサイト“Our World in Data”で国別の細かい数字を調べるまでもなく、新型コロナウイルスワクチンの接種率は、日本ではなかなか上がってこない。

 そのことの関連では、(1)ワクチン調達の面で日本は出遅れ感が大きいこと、(2)高齢者のワクチン接種受け付け開始後に各地で見られた現場の混乱(5月上旬には固定電話回線に通信制限がかけられる事態に)、(3)接種を担う医療従事者の確保におけるボトルネックなど、事前に想定されていたものも含めてさまざまな問題点が浮かび上がっている。

 先日、区の施設の近くを土曜日にたまたま通った際に筆者は、自分ではできないので息子にインターネットでワクチン接種の予約をとってもらったものの、状況がよく分からないので職員から説明を聞きたくて足を運んだという、高齢の女性を見かけた。「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは縁遠い日本の現実は、こうしたところにもある。

 日本人のワクチン接種意欲は、他国と比べて特に低いわけではない。毎日新聞と社会調査研究センターが4月18~19日に実施した世論調査ではむしろ、ワクチン接種意欲が足元で高まっているという結果が出た。自分が接種を受けられる状態になったらどうするかという質問への回答は、「すぐに接種を受ける」が62%で3月13日の前回調査結果から13ポイント上昇。「急がずに様子を見る」は33%。「接種は受けない」は4%にとどまった。

ワクチン接種意欲はさほど高くない

 もっとも、その後5月7~9日に読売新聞が実施した別の調査では、ワクチン接種についてどうしたいかという質問に対して「すぐに接種を受けたい」と回答した人は30%止まり。「急がないが接種を受けたい」が52%で多数派になり、「接種は受けたくない」が12%、「すでに接種を受けた」が5%という分布だった。質問の仕方にもよるのだろうし、副作用への警戒心からくる迷いが人々にあるのかもしれない。

 医療従事者(全国で約480万人)のうち、2回目のワクチン接種を終えた人は5月10日時点で全体の3割弱にとどまっているという点も、大いに問題視すべきである。まず医療従事者に最優先でワクチン接種を実施し、それから高齢者へと接種を広げていくというスケジュールなのだろうと筆者は理解していた。

 だが、実際の動きは異なっている。接種をまだ受けていない、あるいは2度の接種が完了していない医療従事者は、高齢者へのワクチン接種を内心こわごわ行っているのではないか。日本医師会の中川俊男会長は「高齢者に接種する医療従事者への接種が終わっていないことには違和感がある」と述べ、現場の医師らが懸念を持っていると指摘した。

 そもそも論を言うと、変異ウイルスに今のワクチンがどこまで効くのかという問題や、抗体の持続期間への疑念もあるのだが、新型コロナウイルス対策の「切り札」はやはり、ワクチン接種である。緊急事態宣言などの行動規制は、それまでの間に感染拡大をある程度まで抑え込んでいくための「時間稼ぎ」でしかない。どちらか一つでもうまく運んでいれば話は変わってくるが、今の日本では残念ながら、両方ともパフォーマンスは良くない。

 緊急事態宣言を受けた東京都などからの十把ひとからげ的な休業要請がきめ細かい配慮を欠いているのではないか、弊害・副作用も意外に大きいのではないかといった批判の声も、ちらほら出てきている。

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