
4月27、28日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、今回も投票者の全員一致で金融政策の現状維持を決定した。量的緩和および政策金利のフォワードガイダンスにも変更はなかった。政策金利としているフェデラルファンド(FF)レートの誘導レンジ内へ実際の取引レートをしっかり誘導する目的で、超過準備付利金利(IOER)のごく小幅の引き上げがいずれかのタイミングで実施されるのではと市場はみているが、この時点ではそうした決定もなく、無風だった。
公表されたFOMCの声明文は、景気・雇用の表現を「強まった(have strengthened)」に上方修正する一方、足元でみられる物価の上昇は「一時的な諸要因(transitory factors)」が主因と明記し、ハト派的な姿勢を維持した。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、テーパリング(量的緩和縮小)に関して、「『まだ(議論を始める)そのときではない』と一蹴し、危機対応からの出口論をせかす市場をけん制した」と、日本経済新聞は報じた。全く同感である。FRBが掲げている目標の達成までの道のりがまだ長いことを、議長は繰り返し強調している。
利上げ開始が最大の局面転換
市場はFRBの金融政策に関し、①いつテーパリングの議論の開始をアナウンスし、②実際にいつそれを決定・開始していつまで続け、③バランスシート拡大終了からどの程度のインターバルを置いて利上げ開始(リフトオフ)に踏み切るかという、今後のスケジューリングに大いに注目している。世の中ではしばしば誤解されているが、これらのうち①と②のフェーズでは、ペースは縮小しつつも追加の金融緩和は実施されているわけであり、金融引き締めが開始される③が最も大きな局面転換である。
もっとも、バーナンキ議長の時代に起こった、テーパリング開始観測におびえて長期金利が急上昇した「テーパー・タントラム」の事例がある通り、市場は①・②の時点で、③の到来をも予期して債券や株式を売る方向で反応する可能性が高い。そうしたFRBの意図に反した市場の時期尚早で過敏な反応をFRBがいかに制御するか(あるいはできるか)。
1つの仕掛けとしてFRBは、金利のフォワードガイダンスをアウトカム(結果)ベースのものとしており、目標を設定している物価指標であるPCE(個人消費支出)デフレーターが、実際に持続性を伴って物価目標である2%を緩やかに上回ったという実績を確認してから初めて利上げに動くつもりだということを、折に触れて強調している。物価上昇の「見通し」だけでは、利上げの条件は満たされないというわけである。今回のFOMC後のパウエル議長記者会見でも、「われわれは見通しではなく、実際のデータに基づいて行動する」という発言があった。
たしかに、FRBは市場にせかされる形で利上げ前倒しに動くようなことはなく、自らの信認の維持を意識しつつ、「言行一致」の粘り強い対応をしていくだろう。しかしその代わりに、利上げ局面の終着点(ターミナルレート)は、前回利上げ局面の2.25~2.5%よりも低くなるのではないか。金融政策の動向に過敏な近年の株式市場の性質なども加味すると、今回の「天井」は前回の半分程度にとどまる可能性も少なからずあると、筆者はみている。
この点をもう少し詳しく考えてみよう。
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