米欧の中央銀行は、新型コロナウイルス対応で強力な金融緩和を続行しており、目標水準を超えるところまで十分に物価を上げるまでは、利上げを中心とする金融引き締めには動きそうにない。

 そうした中で、仮に日銀がとったアクションが「金融引き締め一番乗り」的な「市場金利の高め誘導」だと受け取られたり、ETF買い入れからの事実上の「撤収」だと受け取られたりしてしまうと、円高が急速に進んでいく恐れがある。足元のドル円相場は、100~110円前後のボックス圏の中では円安方向に傾いた上半分におり、日銀から見ればある程度の余裕があるものの、為替は動くときは速いので、油断は禁物である。

 長期金利の動向に関して言えば、「連続指し値オペ」創設という日銀の一手を過大なまでに評価する向きが市場の一部にあるのは、日銀からすれば実に好都合な話だろう。

 「明確化」された後の10年債利回りの変動許容幅上限は、0.25%程度。市場実勢がそれに近づいてきているのなら緊張感が強まるのかもしれない。だが実際には日銀の「点検」結果が出るよりもかなり前、2月26日の段階で、10年債利回りは0.175%でピークをつけた。

だらだら続く、勝算のない長期戦

 その後は買い戻され、利回りは19日時点では0.1%台前半に下がっていた。0.2%にも届かず相場が自律的に反転しているのに、それよりも遠い0.25%前後で必要に応じて連続実施される可能性がある日銀の新手法を「強力なカード」だと今の段階でもてはやすのは、筆者としてはいただけない。

 むろん、日銀には長期金利上昇を促したり、国債イールドカーブのベアスティープ化(金利上昇方向での急傾斜化)を促したりするつもりが現時点ではないことは、イールドカーブ全体の低位安定を当面重視するとした今回の公表文の内容から容易にわかることだし、黒田総裁が記者会見で「イールドカーブを立てるように何かするということも全く考えていない」と述べてダメを押している。その一方で、長期金利の低下を促すつもりも日銀にはないこともまた事実だろう。

 いずれにせよ、物価目標である2%達成のめどが全く立たない中で、異次元緩和はエンドレスの様相を引き続き呈している。一度始めてしまった政策を終わらせるのは、容易なことではない。そこで、勝算のない長期戦・持久戦がだらだらと続いていくことになる。

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